秋田県人会の元副会長、大槻洋志郎さん(73、秋田)が昨年11月16日から3週間、日本に滞在した。滞在中、大樋焼きの陶芸家十一代大樋長左衛門氏に自身の陶芸作品を評価してもらい、陶芸を通じた日伯間の「土の交流」を報告した。
7~8年前に膀胱がんを患い、また長年務めた仕事を辞めるなど絶望の淵にいた大槻さん。その時、自宅の敷地内で見つけた黒色の粘土の形を整え野焼きすると器が出来た。なんとなく手ごねた粘土が作品になった感動から、陶芸への感心が高まり石川県人会での陶芸教室に参加した。
陶芸作りを自身にとっての「希望」と話す大槻さんは、「当時はまるで死んだ自分を上から見ながら生活しているような感覚。そんな中でなんとなくこねた黒い粘土が焼き終えると柔らかな黄色に変わり、まるで希望のようだった」と当時の心境を語った。
陶芸作りを続けるうち、埴輪の作成が中心になっていったという。「あの何もない円筒に空く小さな穴。単純で素朴な埴輪の穴は無であり、その中に人間の大事な愛や命、心を感じ、今回の作品『心眼』ができた」と語った。
一昨年に文協で行われた第9回文協総合美術展では、刀を携えた勇ましい埴輪『心眼』で佳作を受賞。同作品を十一代大樋長左衛門氏に評価してもらった際には、自分なりのやり方で進むという「邪道でいくこと」、また「精進すること」という助言をもらった。
プロからの評価を糧に、大槻さんは「これからも陶芸を通し両国の交流の一助になれれば」と、熱のこもった様子で意気込んだ。
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