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FGTS=引き落としに早くも規制=生活苦緩和のための政策も=富裕層の使用に制限かかる

 労働者の生活苦解消策として昨年12月にテメル政権が発表したFGTS(勤務年限保障基金)の引き落とし解禁が、わずか1カ月で見直しを迫られており、引き落としが制限されそうだと、19日付フォーリャ紙が報じている。
 テメル政権は昨年12月、15年12月31日以降に入金がなく、機能していないFGTSの口座を持っているすべての国民に対し、FGTSを引き落とすことを可能とする政策を発表した。この政策は当初、引き落とし額を制限する意向だったが、実際の発表は、この制限をはずした状態で行われた。
 テメル大統領はこの対策により、FGTSから300億レアルが開放されることで、国民の負債が緩和され、それが経済活性化につながると期待していた。
 だが早速、問題点が見つかったことで、連邦政府は対策の修正に乗り出している。
 政府が問題としているのは、機能しなくなった口座の2%は、引き出し可能な積立金の額が非常に高額であることだ。
 政府は、この2%の口座の持ち主は非常に所得が高いはずと判断して、引き落としを制限する意向だ。現段階では、FGTSの口座にたくさんの預金がある人たちに対しては、利率の良い投資ファンドへのふりかえは認めても、消費するために引き落とすのは制限することになると見られている。
 また、この規制は、不動産業者をはじめとした企業を喜ばせる目的もある。FGTSで積み立てられた資金は、通常、不動産の建設費や、衛生事業に回されていたため、FGTSを開放することに関しては、かねてから不動産関連の企業から「これでは数年で、住宅ローンの貸付資金が支えられなくなってしまう」との批判の声があがっていた。不動産の積み立て資金に回されるはずのFGTSの額が減る速度を落とすことで、政府はこれらの企業を安心させたい狙いがある。
 だが、その一方で、この規制を嫌う政府関係者もいるという。彼らの言い分は「ほんの一部の人たちのために、本来、低所得者層のための対策に規制が入るというのは、よい印象を与えない」ということだ。このFGTS開放は、ブラジルが景気回復に苦しむ中、クリスマスの直前にプレゼントのように発表され、国民から好評を得ていた。
 なお、FGTSを管轄する連邦貯蓄銀行(CAIXA)によると、開放できるFGTSの金額は実際には190億レアルだという。