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トランプ米大統領=TPP離脱のブラジルへの影響は?=アメリカとの競合分野には朗報=独自の市場開拓が肝要=米国保護主義への警戒も

20日の米国大統領就任式の様子(Ching Oettel/The National Guard)

20日の米国大統領就任式の様子(Ching Oettel/The National Guard)

 ドナルド・トランプ米大統領が23日、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱に関する大統領令に署名し、米国のTPP離脱が決定的になった事は、同協定の〃かやの外〃に置かれていたブラジルにとっては好機だと24日付現地紙が報じた。

 TPP離脱はトランプ大統領の選挙公約の一つで、米国の保護主義、二国間交渉優先の姿勢を明確に表す行為だ。
 24日付地元紙は、「短期的に見れば、少なくともブラジルの農業部門にとっては朗報だ」と報じた。
 ブラジルと米国は穀物と食肉の世界市場で事実上の競合状態にあり、TPPが予定通り発効していたら、その加盟国(予定では米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、日本、豪州、ニュージーランドなど12カ国)内の市場において、米国製品がブラジル製品より優位に立つはずだった。
 TPPが想定されていた12カ国での米国は、関税を支払っていたにもかかわらず、農業生産物だけで570億ドルの輸出高をあげていた。米国がTPPに加盟していれば、それらの国々に低関税または無税で食料品を輸出できるはずだった。
 トランプ大統領は、TPPだけでなく、北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱も示唆している。
 米国、カナダ、メキシコではNAFTAゆえに域内関税がかからないため、日系の自動車会社はこれまで、人件費の安いメキシコに生産工場を建て、米国に輸出する戦略を採ってきた。だが、トランプ大統領は就任前にインターネット短文投稿サイト「ツイッター」でトヨタ自動車を名指し、「米国に工場を建てろ。さもなくば巨額の関税を払わせる」と書き込み、脅した。これは同大統領がNAFTAを好意的に思っていない事を表すほんの一例だ。
 NAFTAが効力を失えば、カナダ、メキシコがブラジルから穀物、食肉を輸入する条件は、米国から輸入する条件と同等になりうる。
 短期的に見れば、ブラジルはトランプ大統領の政策で利益を得るが、長期的に見ると、各国が保護貿易主義に追従した場合、ブラジルの輸出産業には障壁となると同紙は結んだ。
 一方、別の地元紙は、「米国のTPP離脱はブラジルにとって有益だが、ブラジルはこれに関わらず、EU、欧州自由貿易連合(EFTA)、インドなどとの個別の貿易協定締結に向けて協議を重ねていく」という、カルロス・マルシオ・コゼンジ外務省経済金融局副局長の言葉を紹介している。
 同紙では、トランプ政権発足で生じうるブラジルへの最大のリスクは、米国が保護貿易主義色を強め、ブラジル産製品への関税引き上げや対象品目拡大、米国製品に比較して安いブラジル産製品を不当ダンピングだと告発するなどの方法で輸入制限をかけてくることとの市場関係者の懸念も掲載している。