各国で環境保全活動などを行なうNGO「オイスカ・インターナショナル」の中野良子(よしこ)総裁が、サンパウロで進める植林事業「子供の森」計画の本格スタートに合わせ来訪した。サンパウロ(聖)州クーニャ市で28日に記念植樹祭が行なわれ、自然保護以外にも植林を通じた人材育成などに貢献したい意向を明らかにした。
東京に本部を置くオイスカは、サンパウロ市内のチエテ・エコロジコ公園、カルモ公園などで植林事業を行なう。ブラジル当地では今回が本格的な始動となった、「子供の森」計画は、児童に植林を体験させ、環境保全に対する意識を育むことを目的とし、すでに世界30数カ国、約5千校で展開している。
当地での同事業は、サンパウロ州政府と連携することになった。地球温暖化対策に関する新たな枠組み「パリ協定」をブラジル政府が批准し、25年までに1200万ヘクタールの植林目標を掲げ、州政府も600万本の植樹を目指す。オイスカはその内の50万本を、クーニャでの「子供の森」計画を通じて協力する。
事業開始を記念し28日、現地で植樹祭が行なわれた。オイスカ、州政府ほかブラジル・ニッポン移住者協会の協力の下、地元児童30人ほどが集り、在来種を植えた。より多くの地元小学校を巻き込みたい意向で、中野総裁は「森の大切さを学ぶことで人材育成に貢献したい。強いては自然豊かな地元を愛する、『ふるさと愛』を育みたい」などと意欲を語った。
同行した渡邉忠副総裁によれば、参加農家には生活排水の浄化槽が州政府から贈られるという。「下流地域一帯の環境保全にもなる」と効果を期待し、酪農家には優良な牧草の種子も提供されるなど、小農支援にもつながると紹介した。
渡邉副総裁は「木が増えればきれいな水も流れる。なぜ植樹するのか意義を伝えながら、学校教育の一環として動きたい」と意欲的に語った。
一行は26日深夜に到着し30日晩に離伯した。最終日前日には、国士舘スポーツセンター(サンロッケ市)にある「コチア青年の森」も視察し、移住者らとも交流した。30日に開かれた会見では、「誇りを持って生きる彼らに『日本人ここにあり』と感じた。少し年下の彼らがまだ現役でがんばっている」と、刺激を受けた様子で話した。
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オイスカ・インターナショナルの中野良子総裁が来伯し、ブラジルニッポン移住者協会の杓田美代子会長等とともに27日、サンパウロ州チエテ・エコロジコ公園にて植林活動を行った。とても強い雨の中、傘を差しつつ行われた記念植樹で、中野総裁はブラジル特有の赤土で手を汚しながら懸命に作業をした。中野総裁は「現地で世話をしてくれる協力者がたくさん居るおかげ。とても嬉しい」と話し、現在の協力者は年配の方々が中心であることに触れ、「今後は若者に継いでいくことが大切。そうでないと森は続かない」と語った。今回植えたアカシアは非常に深く主根を伸ばすため、ほとんど降水が無い砂漠でも育つとか。この植林活動自体も深く根を伸ばし、若者にも広がってほしいところ。