アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は1月30日に、移民法を改正する大統領令に署名したと1月31日付ブラジル国内紙が報じた。
同改正案は、犯罪歴を持つ移民や、ペルー、パラグアイ、ボリビア、メキシコといった麻薬密売の盛んな国から入国してくる移民を制限する事を目的としている。
改正の理由として、マクリ大統領は「アルゼンチン人最優先」「ならず者たちがアルゼンチンを犯罪の舞台に選ぶ事を許すわけにはいかない」「入国してくる人間の素性を精査する必要がある」など、ドナルド・トランプ米大統領が好んで使う言葉に似た表現を用いた。
政府の決定は野党の支持も得ている。野党正義党の大物政治家ミゲル・ピチョット上院議員も、「アルゼンチンは常にボリビアの社会問題、ペルーの犯罪問題の調整役の役回りを押し付けられてきた」と語った。
アルゼンチン政府によると、16年の刑務所収監者の21・35%は外国人で、麻薬密売に絡んだケースでは、外国人が33%に及ぶという。
移民法改正により、国境管理施設への設備投資が増額され、境警備の警察の人員も増強される。移民に関するデータベースへのアクセス技術も改良される。アルゼンチン移民局局長のオラシオ・ガルシア氏は「従来は犯罪歴のある外国人麻薬密売人がいても、国際刑事機構の指名手配犯以外はデータにアクセスできなかった。今後はそれも変わっていく」と語った。
入国の際の管理官からの質問もより厳しくなり、必要な提出書類も増える。
移民法改正案の主要点の一つは、不法移民国外追放の手続きが早まる事だ。不法移民は、国外追放までに6~7年かかっていたが、同大統領はこの手順の簡素化、スピード化を狙っており、不法移民用の強制収容施設建設もささやかれている。
この政策に対し、国内からは「選挙前に内政問題を外国人のせいにしようとしている」「犯罪歴のある人物の入国制限は理解できるが、アルゼンチンは移民に開かれた国と憲法に定められている」との反対の声も上がっている。
マクリ大統領はここ数日、移民流入差し止めなどにつながる大統領令を複数出しており、1月26日には、ブラジルやパラグアイ、ウルグアイ、チリとの国境に14の国境センター新設するための大統領令にも署名している。
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