今回のテーマがご好評いただいているそうなので、19話まで続けたいと思います。
【痛み方でわかること】
首や腰に痛みや痺れを感じたとき、病院に行くとレントゲンやCT、MRIなど画像検査を受けることになるのが一般的ですが、前号でもお話したように「愁訴」(体調が悪いという自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態を指す)の原因が写真に描出される確率は20%と言われています。
非科学的に思われるかも知れませんが、痛みを感じている組織が何なのかを鑑別するときに、実は本人の感覚があてになるのです。
《痛みの原因が骨組織である場合》
愁訴の原因が骨折や関節の変形にある場合、ズキズキと突き刺すような痛みか、痛みで脂汗をかいたり、吐き気を催したりする激しい痛みが特徴です。放置しておくと時間の経過と共に痛みが強まり、我慢できなくなります。
《痛みの原因が神経組織である場合》
椎間板ヘルニアや関節の変形、靭帯の肥厚(ひこう)によって、脊髄や神経根が圧迫されている場合は、感覚麻痺や感覚過敏、焼けるような痛み、チリチリとする表面的な痛み、稲妻が走るような痛みが特徴です。
《痛みの原因が筋・筋膜である場合》
腰痛や肩こりなど運動器に関する痛みのうち、80%以上の原因は筋・筋膜(靭帯と腱を含む)の癒着や炎症と言われています。これら軟部組織の痛みは、うずくような痛み、部位が特定しにくい漠然とした痛み、こぶしで叩きたくなるような痛み、ぐったりするようなダルい痛みが特徴です。
また、「動作痛」といって動き出す瞬間や、同じ姿勢を続けていると痛みが強まるのも特徴の一つです。
昨年末に私が経験した痛みは、なにをしていても大型犬に噛まれているような強烈な痛みで、歩くことも眠ることも出来ませんでした。腰痛を患う人は大勢いますが、このレベルの痛みに至るのは稀なケースです。
ほとんどのケースは、「椅子から立ち上がる瞬間」「屈んで物を取ろうとしたとき」といった動作にともなう痛みか、「ずっと座っていると辛くなってくる」「立ち続けていると腰が重だるくなる」といった同じ姿勢を続けたときの重だるい痛みです。
安静時の激しい痛みや手足の痺れ(感覚異常)が生じていないのであれば、一定期間を安静に過ごしていれば、じきに症状が治まる可能性が高いと言えます。
【痛みの伝えかた】
医師に症状を伝える際に、ただ「痛い」とか「痺れる」と言っても、彼らの耳にはタコができているので、多少の工夫が必要です。以下は一例ですが、医師を本気にさせる表現を列挙してみました。辛さを伝えるときの一助になれば幸いです。
【医者を本気にさせる表現の例】
「飛び降りたくなるような」
「発狂したくなるような」
「誰かを襲いたくなるような」
「火で炙られているような」
「ちぎれそうな」
「犬に噛みつかれているような」
「刃物で切られているような」
「キリで刺されているような」…
【プロフィール】
伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身
メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。