世界保健機関(WHO)は3日に発表した声明で、現在ブラジルで流行中の黄熱病が南米諸国に拡がる危険性がある事を示唆したと、4日付現地紙・サイトが報じた。
WHOは、ブラジル各地で死んだサルが1200頭に及び、その内259頭の死因が黄熱病感染だった事を不安視している。また、「ベネズエラと国境を接するロライマ州や、パラグアイ、アルゼンチンと国境を接するパラナ州、マット・グロッソ州での動物への感染発生、とりわけ生態系が国境をまたいでいる場合は、隣国への感染拡大の危険性を示している」とし、黄熱病ウィルスがアルゼンチン、パラグアイ、ベネズエラに入った可能性を示唆した。
ブラジル保健省が3日に発表した報告書によると、ブラジル国内では昨年12月以降、黄熱病が疑われる症例は921件報告されており、その内161人が実際に黄熱病だった事が確認された。黄熱病による死者の数は60人に及んでいる。
WHOは、現時点で黄熱病感染が確認されているのはブラジルだけであると強調した。ペルーとコロンビアでも黄熱病の疑われる症例が出ているが、感染は確認されていない。WHOは黄熱病が確認された国、発症の疑いのある国への渡航回避勧告を出すには至っていない。
ブラジルでの黄熱病流行に関しては、米国疾病管理予防センター(CDC)も、渡航前に黄熱病予防接種を受けるよう指示しているが、渡航キャンセルは勧告していない。
WHOはブラジル政府に対し、ワクチンの備蓄とワクチン優先供給地域の策定を始めるべきだと勧めており、ワクチンの供給は、流行地域やそこに行こうとしている旅行者へ優先して行われるべきだとしている。
ブラジル保健省は3日、感染が確認された患者のいる地域やその周辺だけではなく、感染の疑われる症例が報告された五つの州に820万人分の追加ワクチンを送ったことと、感染が最も多く発生している自治体へ、ワクチン接種補助のための特別予算として4千万レアル(14億円相当)を投入することを発表した。
WHOは、黄熱病の致死率が36%に達していることにも注目している。これまでに確認された黄熱病による死者60人中、53人はミナス州在住者だった。
リカルド・バロス保健相は、「今発生している流行は全国規模ではなく、局所的なもので、国境付近で報告されているのは感染が疑われる症例だけだ。万が一、国境付近で感染が確認された場合は、速やかにWHOに報告する」と述べた。
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