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《ブラジル》最高学府のトップ合格者は黒人の公立女学生=ブラジル教育史に残る快挙

 ブラジルの最高学府と言えば、サンパウロ総合大学(USP)医学部だが、今年の入試でトップ合格を果たしたのが公立校に通う黒人の女子学生だったことが明らかとなり、国内で大きなニュースとなっている。
 一躍、ヒロインとなったのは、USPの医学部があるサンパウロ州リベイロン・プレットの公立校に通うブルーナ・セナさん(17)だ。ブルーナさんが合格した、リベイロン・プレットの医学部の定員は100名で、今年の入試でも競争率は75・58倍という超難関学部だ。
 同学部の競争率は、高校3年生以上が受ける国家高等試験(ENEM)の成績上位者から定員の1割を選ぶことにした2年前から急速に高まっている。2年前の競争率は50・51倍だった。
 ブルーナさんのトップ合格は、公立校生の学力の低さが社会問題化しているブラジルの教育事情から見て、常識では起こりえない快挙だ。
 ブラジルでは近年、ENEMを日本のセンター試験のように扱い、その成績で合格者を決めるシステムを導入する大学が増えているが、ENEMの平均得点の高い学校はほとんどが私立校で、成績上位100校に入る公立校はほんの一握りに過ぎない。
 さらにUSPに限ってみても、学生の比率は男子が57・75%、白人が76・4%、私立高校出身が63・3%だ。ブルーナさんの快挙がいかにすごいかはこういったデータでもわかる。
 ブルーナさんは高校に入学した頃から、USPを受けることを考え、特に高校最終学年だった昨年は猛勉強に励んだ。午前中は公立高校に通い、昼間は独学。夜は夜で、同市のUSP医学部学生がボランティアで教えてくれる、低所得者層の子女用のUSP入試対策用予備校に通い、1日中勉強に励んでいた。
 トップ合格はこうした努力と、公立校のみで学んだ生徒にボーナスを出す、USPの社会統合プログラム「Inclusp」などの相乗効果だ。「まさか、浪人もしないで合格するとは思わなかった」と、ブルーナさんは夢の実現に驚いている。
 ENEMは使わず、入試に臨んだ上での快挙にはブルーナさんも家族も大喜びだが、本人は、入学後に性差別や人種差別にあわないか、少し不安を感じているという。同市のUSP医学部では昨年も、男性至上主義的な事件や性的な嫌がらせといった事件が起きたりしているからだ。
 ブルーナさんは将来の夢について、「専門分野はまだ決めていないが、社会で困っている多くの黒人の人たちを助けることがしたい」と語っている。(6日付G1サイトなどより)