沖縄県人会元会長、沖縄文化センター元理事長の山城勇さん(89、沖縄県糸満市)が綴った自分史『回顧録―おしどり米寿を迎えて』(日ポ両語)の出版祝賀会が5日、沖縄県人会大ホールで開催され、約300人が盛大に祝った。パウロス美術印刷の島袋パウロ・ヒロフミ社長(66、二世)は会場に集まった来場客を眺め、「こんなに集まる出版祝賀会は珍しい。回顧録がこれだけ行き渡ったのが嬉しい」と喜んだ。
糸満市米須出身の山城さんは、軍国少年として1943年に満州開拓青少年義勇軍に志願した。終戦後も2年間、大連で必死の避難生活後ようやく引揚げ。故郷は本島最南端で地上戦決着の地。米須の人口1252人中、半分以上の648人が戦没した激戦地だった。家族全滅かと思っていたら、生存者がおり、涙の再会。だが朝鮮戦争を経て戦争機運が高まる中、南米移住へと駆り立てられ、当地で活躍した様子が回顧された本だ。(本日「樹海」コラムに詳細)
開会挨拶では長男の山城一也さんが日語と糸満訛りの沖縄語で来場客を楽しませた。発起人代表として宮城あきらさんが出版の経過を発表。山城さんの半生を語り、「この自伝は長男、家族との対話でもあり、人間的に深い内容をもつ記録だ」と力強く紹介した。
島袋栄喜県人会長は来賓の祝辞として「苦難の道を乗り越え、平和を願う山城さんの人生が綴られたこの本は、読者に大きな感動を与えるだろう」と絶賛。日伯文化福祉協会の呉屋春美会長、日本ブラジル都道府県人会連合会の山田康夫会長らも祝辞を述べた。
山城さんから日系3団体と沖縄県人会へ寄付が贈られ、日伯援護協会の園田昭憲副会長が謝辞を述べた。続いて元県人会長の宮城滋さんが乾杯の音頭を取り、懇親会へ。
山城さんの妻・千恵子さん(85、糸満市)は、「一生懸命な姿を見ると自然と協力したいという気持ちが湧く。県人会長になっても、県人会から帰ってきて着替えもせずに家の仕事を助けてくれた」と家族想いの一面を語った。
山城さんは同書について「戦争を知らない世代に一番読んで欲しい」と語り、「二度と戦争を起こさないように、戦前の日本の様子を知って欲しい―あの地獄を繰り返してはいけない」と苦い記憶を振り返った。「次の世代には世界情勢を見て、平和に向けた活動をして欲しい」と真剣な眼差しで訴えかけた。
「山城さんの県人会での仕事を目にしていたが非常に仕事熱心な人」と語ったのは来場者の伊良皆成勤(いらみな・せいきん)さん(81、与那原町)。「彼の回顧録はとても興味深い。今回の出版はとてもめでたい」と目を細めて祝った。