ホーム | 日系社会ニュース | ニッケイ新聞=『勝ち組異聞』日本で出版=勝ち負け抗争の連載選集=移民のナショナリズム解説=邦字紙100周年、パ紙創刊70周年

ニッケイ新聞=『勝ち組異聞』日本で出版=勝ち負け抗争の連載選集=移民のナショナリズム解説=邦字紙100周年、パ紙創刊70周年

2日に日本で発売された『勝ち組異聞』(アマゾンならhttp://amzn.asia/7aEdCZz 無明舎サイトならhttp://www.mumyosha.co.jp/docs/17new/katigumi.html)

2日に日本で発売された『勝ち組異聞』(無明舎サイトならhttp://www.mumyosha.co.jp/docs/17new/katigumi.html)

 ニッケイ新聞は2日に日本で、『勝ち組異聞』(無明舎出版、1800円)を出版した。勝ち負け抗争に関する連載から8本を選び、それぞれ記事で扱った事件や人物を歴史の中で位置づける解説文をつけたもの。移民による国境を越えた祖国愛「遠隔地ナショナリズム」の現実を考え直す具体的な事例が並べられており、ブラジル日本人移民史、ナショナリズム、勝ち負け抗争などに関心を持ち始めた初心者にも、社会的な背景を含めて分かりやすい内容になっている。この本がブラジルに到着するのは6月になる。

 第1章が「勝ち負け抗争のおおまかな流れ」では、従来「勝ち組=狂信者」「臣道連盟=テロ集団」という記述が多かった過去を振り返り、70年が経った今だからできる、もっと幅広い視点から読み直す試みが概説されている。
 第2章「大宅壮一『明治が見たければブラジルへ!』の意味」では、明治の精神を持った戦前移民がなぜ多かったのかという謎解きから始まり、他国移民にも共通した「移住現象」の根本を解き明かす。
 第3章「日本移民と遠隔地ナショナリズム」では、最近の在米韓国人、ユダヤ人などと比較しながら、戦前の日本移民に強烈なナショナリズムが芽生えた背景を解説する。国境を越えた祖国愛が、戦争にぶち当たり、帰りたくても帰れない現実に苦しんで集団的「精神病」状態になっていく状況を追う。
 第4章「身内から見た臣連理事長・吉川順治」は、「テロ集団の首領」とみられていた吉川中佐の知られざる素顔を身内から取材したもの。
 第5章「二人の父を銃弾で失った森和弘」では、勝ち組によって養父と実夫を一度に射殺された森和弘の証言から、同抗争の衝撃が二世の人格形成に与えた影響、その襲撃者自身も負け組によって無残に射殺された現実を描く。
 第6章「襲撃者の一人、日高徳一が語るあの日」では、2000年の頃までマスコミには一切、接触しなかった脇山大佐襲撃犯の一人・日高徳一の証言をたどる。同抗争の襲撃者らが少年時代だった戦前戦中、明治の精神で純粋培養されながら人格形成された時代だった現実を追う。
 第7章「正史から抹殺されたジャーナリスト、岸本昂一」では、日本語書籍としては唯一、政治社会警察から禁書にされ、国外追放裁判を起こされた反骨のコロニア・ジャーナリストの生涯を書き留めた。
 第8章、第9章ではフェルナンド・モライスが発表した著書『コラソンイエス・スージョス』に対する子孫からの反発が、勝ち負け抗争の反動として起きている様子を説明したもの。ここからは同抗争の余波が、70年経った今も続いていることが分かる。
 なおこの出版は今年がパウリスタ新聞(本紙の前身)創刊70周年であり、もう一つの前身・日伯毎日新聞も来年創刊70周年、さらにニッケイ新聞自身が来年3月には20周年を迎える一連の慶事、さらに昨年が南米最初の邦字紙である週刊『南米』創刊100周年だったことも記念している。