「昨年は激動の年で、前回シンポでは経済はどん底で耐え忍ぶ状態だった。だがテメル政権による経済政策が奏功し、インフレ沈静化など経済指標に明るい兆しが見えてきた。この潮の変わり目に何をすべきか。いま出来る課題をしっかりと認識しましょう」―2月23日午後、サンパウロ市内ホテルで開催されたブラジル日本商工会議所の総務・企画委員会が共催する「業種別部会長シンポ」で、松永愛一郎会頭はそう挨拶し、来場者は11部会の予測に聞き入った。
金融部会の大谷隆明会長は、テメル政権に対する市場の信任が高く、経済政策が奏功しつつあると分析。為替安定や政策金利引き下げによって投資や消費が活発化し、今年第3四半期には回復に転じると予測する。
今年のGDP成長率は0・5~1・0%で小幅成長になるとしつつも、それ以降は経済が本格的に持ち直し、18年には1・0~4・0%成長との予測値を紹介。「攻めの姿勢で地に足の着いた中長期計画の策定を」と呼びかけた。
貿易部会の今井重利部会長は、昨年の輸出入総量が最高時の4割近くまで落ち込み、「対日貿易の落ち込みは顕著で、日系企業の投資離れも進んだ。日本の地盤沈下が顕著に現れた年だった」と回顧する。対内直接投資が500億ドル台で安定的に推移するなか、「ブラジルの高い将来性を広報し、将来に向けて我慢すべき年」と総括した。
機会金属部会の池辺和博部会長は、鉄鋼や自動車部品分野では「緩やかな回復が予測される」とする一方、汚職捜査による煽りを受ける建設関連分野では「今年の見通しも暗く、回復は18年以降」といい、「各社新規需要の開拓や、コスト削減や品質向上など改善を図り、事業基盤を強化すべき」とした。
自動車部会の溝口功部部会長は、4年連続生産台数減となるなか、日系メーカー各社は輸出や販売網拡大に力を入れるなどシェアを拡大してきたと健闘ぶりを紹介。国内市場の回復及び輸出台数増により、今年の生産台数は5年振りに増加に転じ、12%増と予測。部品現調化など、環境変化に負けない事業体質強化を引き続き行う方針だ。
コンサルタント部会の関根実副部会長は、ブラジルは国際競争力ランキングで138カ国中81位、構造改革が必要とされるが、世界7番目に外国直接投資を得る国になると予測する。労働者の権利意識が強く、賃金が高まるなか、人的資源に頼らないロボティクスや、無理な販売を回避して、きちんと与信管理を行うことを提言した。(つづく)