独立行政法人国際協力機構(JICA)は21日、サンパウロ市ニッケイパレスホテルで「2015年度派遣現職教員ボランティア帰国報告会」を開催し、3月に帰国予定の6人がポルトガル語で発表を行った。
清水丈嘉さん(ブラジリア学園)は「授業内容がほとんど決まっていた日本とは違い、ブラジルでは自由に授業を組むことができた」と話し、「授業の意義や教え方などたくさん考えさせられた2年だった」と有意義な様子を伝えた。
反対に異文化に悩んだ声も聞かれた。山根孝仁さん(マルピアラ学園)は「語学の壁に直面し、自分の世界に閉じこもっていた時期もあった」と明かし、「乗り越えられたのは、受け入れ先の方々やJICAの方々に支えられたおかげ」と途中、込み上げる思いに言葉を詰まらせながら感謝を伝えた。
またトメアスー日系学校に派遣された青山将之さんは、ブラジルでは理科の実験が日本と比べて少ないことに気づき、実験を多く取り入れた授業を組むよう工夫をした。報告後は、「トメアスーで鍛えた」という自慢の筋肉と特産品を紹介する映像で、会場の笑いを誘った。
帰国後について意欲を見せる者もいた。江間成昭さん(ジョセフィーナ・デ・メロ学校)は、「両国の良い点を導入した在日ブラジル人への日本語教育に尽力したい」と熱く語り、ブラジルの文化を伝えるために始めたというカバキーニョの演奏を披露した。
関西一外国籍児童が多い小学校に勤務する西堀恵子さん(ミラソル学園)は、ブラジル行きを悩んでいた時、ブラジル人の保護者に背中を押されたという。「福音派である同学園での経験は帰国後、様々な宗教を信仰する外国籍児童に寄り添う上でとても重要。貴重な経験をさせてもらった」と涙ながらに感謝を伝えた。
小池美也子さん(めぐみ学園)は来伯当初「ブラジルの指導は甘い」と感じていたが、自由に考え、自分の意見を堂々と言うブラジルの生徒を目の当たりにし「褒めることの大切さを痛感した」という。「文化の異なる日本では、ブラジルの先生ような抱擁は出来ないけれど、生徒の良い所をちゃんと褒めてあげられる先生になりたい」と語った。
那須隆一所長は講評で、「報告から多くの熱意や苦労、配属先の支えがあったことがうかがえた」と語り、「この感動を帰国後も忘れず、今後のグローバル社会を担っていく子供達への教育につなげていってほしい」と教師達へ激励を送った。
最後はブラジルへの感謝を込めて国歌を斉唱し、和やかな雰囲気での閉会となった。
□関連コラム□大耳小耳
任期を終えたJICAボランティアの6人。その内、滋賀出身の山根孝仁さんには、姉妹提携の仲介役という課題が残されたようだ。なんでも本紙で掲載する日系社会ボランティア30周年を記念したリレーエッセイで、山根さんの活動を知った南大河州在住の和田好司さんから、「イボチ市との姉妹都市提携の仲介役になってほしい」と連絡があったという。州県提携はあるが、都市間ではない。先月23日には実際にイボチ市を訪れ、市長やポルト・アレグレの領事と会い、提携について話し合った。日本側との連絡はまだとっておらず「これからどのような形を想定されているのか、しっかりお話を聞いて私も行動していきたい」とのこと。道のりは長いかもしれないが、2年の経験を糧にぜひ実現を!