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《ブラジル》サンパウロ州版ラヴァ・ジャット作戦始まるか

「サンパウロ州道路開発公社の元幹部が1億レアル受け取った」と告発する記事

「サンパウロ州道路開発公社の元幹部が1億レアル受け取った」と告発する記事

 サンパウロ州に大激震が走りそうだ。ジョゼ・セーラ元州知事が2月22日に外務大臣を突然辞任した理由は、公式には「健康上の問題」。辞任会見の映像を見ると、確かに目が虚ろになって心なしかフラフラしているように見えた。だが、エスタード紙5日付にとんでもない大疑惑が報道されたのを見て、「本当の理由はこれだったのか?」との憶測が頭をよぎった▼同エスタード記事によれば、この疑惑はラヴァ・ジャット作戦(LJ)で捕まっているアジル・アサジ容疑者が捜査陣に告白したもので、司法取引証言(デラソン・プレミアーダ)に認めてもらい、減刑をえようとしている。セーラ州知事時代(2007―10年)の州道路開発公社(Dersa)元幹部パウロ・ヴィエイラ・デ・ソウザ氏が「1億レアル」を受け取ったという疑惑だ。同幹部が仕切って、新マルジナル・チエテ、ロドアネル、ジャク・ペッセゴ街道などの工事費の1%を組織的に、サンパウロ州議会のPSDBと連立与党に収めさせていたとの疑惑だ▼2007年から2012年の間に、大手ゼネコンと道路公社の間に13億レアルもの架空契約を結んで、資金を動かしていたとも証言しているようだ。ペトロブラス疑惑と基本的に同じやり口だ。アサジ容疑者は、昨年8月に逮捕されて以来、「ペトロロン疑惑最大のノッタ・フリア(ニセ領収書)発行者」と言われ、現在クリチーバ連邦警察の留置場にいる▼政治評論家ケネジィ・アレンカールは6日のCBNニュースで、「アサジの司法取引はLJ作戦のサンパウロ州版を生むはず」と見通し、《PT連邦政府に起きたことと違って、サンパウロ州のPSDB政府に関する汚職告発はここ数年、一度も進展しなかった。LJ作戦として捜査する事で真相に迫る絶好の機会となる》とコメントした▼今まではいくらサンパウロ州検察局が動いても、長期政権を握るPSDBの力でもみ消されていたと彼は見ている。だが、LJ作戦であれば連邦検察庁が動くので、州内政治家の隠ぺい工作がやりにくく、より透明性が高い捜査になると期待している▼セーラ州政府時代の疑惑が、LJ作戦の一環として本格的に捜査されれば、PSDBは大変なことになる。少なくとも彼が来年の大統領選候補になるのは相当難しくなった。水面下では2月からこの報道が近々出ることが分かっており、自らの進退に致命的なダメージを与えることを自覚したからセーラは外相を辞任したと考えると、「突然」と思われたタイミングがすんなり腑に落ちる▼リオ州の方でも、LJ作戦の一環として動き始めてから、セルジオ・カブラル元州知事の汚職がどんどん明るみにでている。同様のことが、セーラ州知事時代に起きていたとすれば、とんでもない大スキャンダルになる▼くわえて、PSDB内で大統領選の候補争いの最有力候補であるアエシオ上議も、ラヴァ・ジャット作戦でどんどん追い詰められている。彼の庇護者であるFHC元大統領が、あえて隠し口座(カイシャ2)を弁護する声明まで出さざるをえなくなっている状況であり、かなり先行きは厳しい▼そんな流れの中で、この6日にサンパウロ市で行われた企業家懇親会「リデ」の昼食会で、アウキミンサンパウロ州知事が来年の大統領選挙に出馬したいと、異例の早いタイミングで宣言を出した。最近はドリア市長の人気が高まっており、「来年の大統領選の候補になるのでは」との憶測が高まっていた。それを否定するようなアウキミンの声明だ▼つねに慎重姿勢の同州知事は、選挙年の党大会の正式決定を待って宣言する―という印象を持たれていた。今の段階で出馬意欲を口にするのは、相当な自信があるとしか思えない。政治的な消去法により、PSDB内での候補争いの「決着がついた」と言わんばかりだ▼だが万が一、セーラ州知事時代に限定した疑惑でなく、前後を挟むアルキミン州知事時代に汚職問題が波及すれば、とんでもないことになる。そのときこそ、本当にドリア市長が大統領候補になるかもしれない。(深)