最近アメリカのスタンダード&プアーズ社㈱(Standard & Poors)はパラグァイ政府発行のソブリン債を「BB」ランクに格付けした。
違憲とも云われる来年の大統領再選の問題を巡めぐって、近頃の政界はいたって喧すしく、政府機能がとみに混乱しており、財政運営や公債履行能力に問題をもたらしている、という世論に応えた発表である。
このS&P社の「BB」格付けは、パラグァイ政府発行の2017年度ソブリン債に対する認定である。政府はこれをインフラ整備や設備投資の資金に充てる計画である。
ちなみに、S&P社の長期国債の信用格付けは、AAA、BBB、CCCの順にランクされ、パラグァイの「BB」の場合は、中位の「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日どおりに履行する能力が不十分となる可能性がある」という評価に属する。
適度な赤字財政
経済解説者によれば、パラグァイ政府の慎重なマクロ経済政策は、これからも健全な展開をたどるであろうと評す。同じく、例え増加の傾向にはあっても適度な財政赤字の維持により、これが低いレベルで推移するであろうという。
件のソブリン債の発行は、国会で政治的反対の的になっているが、国家収支総予算、一般会計の構造によって保証サポートされている。《註=「ソブリン債」英sovereign bond, 西bono soberano》とは、各国の政府又は政府関係機関が発行し、あるいは保証している債権(国債等)の事で、国や政府関係機関の信用を引当(ひきあて)としている。特にOECD加盟国等のものは利率が低いが、信用格付けが高いため、投資資格債と判断されやすい》
2016年度予算の復元
「憲法確実性」(certeza constitucional)の解釈をもって、司法府(最高裁判所)は2016年度の国家収支総予算の復元適用を確認すると共に、同予算に基づく公債の合法性を認めた。
よって、スタンダード&プアーズ社は、国会の反対にも拘わらず政府の行政能力減少のリスクはないものと判断した訳である。《註=2017年度国家予算は国会が否決決議したので、行政府は大統領の拒否権発動をもって、その公布を取り止め、代わりに前年度の予算を代替復元した経緯がある》
国際市場に於けるパ国債の取扱い
パラグァイ政府は、国債証券の国際市場に於ける組織・管理業務を、多国籍証券会社㈱シティグループに委託した事をサンティアゴ・ペーニャ蔵相が語り、これを同シティグループは確認し、公表した。
これによる国際投資家の招集・会合は、3月20日と21日にヨーロッパ及びアメリカのボストン、ニューヨーク並びにロンドン各市で開催される。ペーニャ蔵相が率いる専門家チームはアメリカでの投資家との会合に出席する一方、中央銀行のカルロス・フェルナンデス・ヴァルドヴィノス総裁の主導する公式代表団はヨーロッパの資本家との交渉に当たる。
ちなみに、約5億ドル相当の国債はニューヨークで、及び一方、約5千800万ドルの国債は中央銀行とアスンシォン市の証券取引所でそれぞれ発行される予定である。
なお、2013年度以来パラグァイ政府が発行した国債は前後3回にわたり、更に1回の再発行債を加えて総額23億8千万ドルである。(問合せは坂本さんへ=kunimaru_sakamoto@hotmail.com)