選挙高等裁判所に2014年の大統領選挙でジウマ/テメルのシャッパに不正があったと訴えていたブラジル民主社会党(PSDB)が、選挙高裁へ提出した書類の中で、「テメル氏には過失がなかった」として、罪をジウマ氏だけに限定して追及する姿勢であることがわかった。28日付現地紙が報じている。
この裁判は、14年の大統領選でジウマ氏に敗れたアエシオ・ネーヴェス氏のPSDBが、ジウマ氏のシャッパに関し、「前任期の大統領として政治や経済で職権を濫用し、ペトロブラスでの汚職の金を選挙キャンペーンに流用した疑いがある」として、ジウマ氏のシャッパを訴え、当選無効を訴えたものだ。
現に、10年、14年の大統領選でこのシャッパの選挙参謀をつとめたジョアン・サンターナ氏は、オデブレヒト社からの贈賄の疑いで逮捕されている。また、選挙高裁での供述でも、同社元社長のマルセロ・オデブレヒト被告が今年3月に、14年の選挙の際に「10年の分の遅れも含めた支払を行った」「直接話したわけではないが、ジウマ氏も秘密口座への支払の件は当然知っている」と言及したとの情報が漏れ報じられていた。
PSDBの弁護士が27日に選挙高裁に送った最終的な申し立ての文書は22頁に及ぶもので、ジウマ氏が所属する労働者党(PT)がペトロブラス内の汚職で事業契約金の3%を賄賂として受け取っていたことなど、ジウマ氏の「職権濫用」について、並べ立てた。
だが、この文書ではテメル氏に関して「違法な行為に関与した痕跡は認められない」として、テメル氏を罪の責任から外すのを望んでいることをうかがわせた。
テメル氏の民主運動党(PMDB)もペトロブラス内の汚職では事業契約金の2%を受け取っていたとされ、オデブレヒト関係者も14年大統領選で不正献金を行ったと証言している。
だが、マルセロ被告は選挙高裁での供述で、「PMDBへの献金に関する会議の際、テメル氏にも会ったが、同氏は金額の話はせずに帰った」と証言している。
今回PSDBが発表した見解は、同党がテメル政権と連立を組んでいる状態でもあり、テメル氏の政権が倒れた場合のブラジルの混乱を恐れているためではないか、と見る向きがある。
一方、選挙高裁で同件の報告官をつとめているエルマン・ベンジャミン判事は27日に最終報告書をまとめ、他の判事に配布した。同判事はジウマ/テメルのシャッパを切り離さない形の裁判を求めており、選挙検察の意見書が出たらすぐ(早ければ来週)裁判を行いたいとしている。
裁判開始はジウマール・メンデス同裁長官が決めるが、同長官を含む判事5人は、国の政情が乱れ、今後の不安定さを増すような事態は避けたいと考えているという。