6日付ブラジル現地紙が、年金改革を軸とする社会保障制度改革に賛成か反対かを下院議員に質問したアンケート結果を発表した。その結果は賛成95、反対251で、ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)による、年金改革達成への道には多くの困難が待ち受けていると同紙は報じた。
下院の総数は513人で、年金改革可決には308票の賛成が必要となる。つまり改革案可決のために許される反対票の限界は205票だが、アンケート結果はそれを既に46票上回っている。アンケートには346人しか回答していないが、残る167人が全員賛成に回っても可決には至らない。
また、95人の賛成議員の内、84人は条件付の賛成で、政府案にそのまま賛成と答えたのは11人に過ぎなかった。
この結果は株式市場にも影響し、同日のサンパウロ市株式市場指数(Ibovespa)は前日比マイナス1・51%となった。
エリゼウ・パジーリャ官房長官は「まだ議員を説得する時間は残されている。政府は必ず改革を達成し、勝利する」と語った。
政府案の〃心臓〃とも言うべき、「受給開始年齢を最低65歳に統一」する案は、年金改革自体に賛成の議員からも評判が悪く、多くが条件緩和を求めている。また、「年金の満額受給のためには49年の年金積立が必要」という点に対しても、緩和を求める声が大勢だ。
政府案には、年金システムの移行措置として、50歳以上の男性、45歳以上の女性は、現行システムで年金受給までに必要な年金負担年数の残りに1・5をかけた年数を余分に負担することを定めているが、それにも多くが反対している。政府原案では、50歳で30年間積み立てたが、あと5年分不足している男性の場合、あと7・5年負担する必要がある。
エンリケ・メイレレス財相は、アンケート結果は現時点での各議員の年金改革への態度を示しているに過ぎず、今後の折衝で、必ず賛成が多数を占めるようになるとの見解を示した。
「反対の出ている項目への譲歩も有り得るか」と問われた財相は、政府財政を損なわない限り、譲歩はありうるとし、当初は今年上半期の内に議会を通過する予定だったが、遅れが出ても本質的な影響はないと語った。
議員へのアンケート結果を受けて、経済専門家たちは、ブラジルの財政再建への国際的な信用度の改善や、改善の兆候が見え始めているブラジル経済の行方は、年金改革の成否と密接に結びついているとし、年金改革が上手くいかなければ、景気回復もおぼつかず、政府の債務支払い能力に深刻な影響が出ると語っている。
元ブラジル中銀総裁で、投資顧問会社ガヴェーア・インヴェスチメント共同経営者のアルミニオ・フラガ氏は、「年金改革が頓挫したら、国家財政健全化の道は絶たれ、影響は甚大だ」と語っている。