「日本祭り」後に田辺さんに呼ばれ、「ぜひ日本語教師を取材してくれ」と声をかけられた。さっそく会うと、JICAボランティア関係以外の大半が非日系だが、しっかりとした日本語で取材に答えた。
生粋のPVっ子の日本語教師フェルナンダ・ラッパさん(21)は、日本語の勉強を始めて6年目。「漫画アニメが大好きで、日本語を勉強したくなった。折り紙、切り紙も」という。手先が器用なようだ。「日本語教師が少ないから最近手伝い始めたけど、漢字覚えるのが大変」。
アニメ以外の日本文化で興味がある点を尋ねると、「江戸時代の文化ね。歴史が好きなの」と意外な回答。しかも「夏目漱石の『吾輩は猫である』も日本語とポ語訳を読み比べているわ。昔の日本が想像できて、面白いのよ」とのこと。アニメを入り口に、かなり深みのあるところまで興味の幅を広げている。
ルイザ・フェレイラさん(21、ボリビア国籍)は国境の向こう側の町ゴヤラ・ミリン生まれ。親の仕事の関係で引っ越しこの町で育った。「カードキャプターさくらのキャラクターがカワイイ。アニメが好きで、4年前に日本語を始めた。半年前から教え始めたけど、助詞や漢字が難しい」。
アニメ以外の興味のある点を尋ねると「祝日、祭日の由来ね。そこに日本の歴史の大事なものが隠れている気がするの」という答え。驚くほど高尚な視点だ。
奈良橋ルイキ勲(いさお、29、三世)はブラジリア生まれで、幼少時にPVへ。12年前から日本語を始め、7年から教師をする。「日本から伯母さんと従兄弟が3回ぐらい遊びに来た。それで日本語を話したいと思うようになった」という。
「18歳の時に1カ月間だけ日本にいっていた。もっと日本の普通の生活が知りたい」。つまり訪日後に日本語教師を始めた計算になる。やはり、訪日経験が若者に与える影響は大きい。デカセギでなく、観光や研修という形で日本体験する機会を増やすことは大きな意味がある。
リオ市生まれのアルベルト・ソブラルさん(27)は6歳でPVへ。
「アニメが好き。ドラゴンボール、ブリーチ、ワンピースとか。あと日本の古い映画も好き。昔の『ゴジラ』とか、黒澤明の『七人の侍』も大ファン」とのこと。「生徒の日本語能力が上がって来たのが分かる瞬間が一番嬉しい。だけど、いくらやっても漢字は難しい」と頭を掻いた。
90年代前半に町が大発展を始めたのと軌を一にして、たくさんの人が南や周囲から流れ込んできたことが、日本語教師の出身地からも良く分かる。国境に近い町らしく、会長同様、多国籍な教師陣だ。親日派の市民が育っていることが教師の姿からも実感される。(つづく、深沢正雪記者)