【既報関連】先月31日に公表された法務省の在留外国人統計によれば、昨年の在日ブラジル人数が、08年のリーマン・ショック以降、初めて増加に転じたことが分かった。昨年12月末時点で18万0923人と久々に18万の大台を超えた。8年ぶりに訪日就労者が増加傾向に転じたことが、統計で裏付けられた。底なしの不況下にあるブラジルから、東京五輪景気で求人増の日本へと向かう流れがはっきり示された。
2007年に31万6967人のピークを記録した後に08年のリーマンショックで激減し、15年6月時点で、17万3038人まで減った。16年末は8年ぶりに増加に転じた節目となった。
就労を斡旋する派遣会社イチバンのサンパウロ支店、志波マルシア支店長によれば、「15年比で、昨年は対応件数が3倍以上に膨らんだ」と言う。ブラジル地理統計院によれば、昨年第4四半期の失業率は12%と最低水準に達しており、「特に失業した若年層の熟練労働者がデカセギの多くを占めている」と足元の雇用状況の厳しさを伺わせる。
CIATE(国外就労者情報援護センター)の永井康之専務理事は、「リーマン以降では初めての傾向だが、先行きは不透明だ」と言う。
「90年代は、一人当たりGDPは10倍近く差があったが、今では3倍ほど。人によっては、どちらの国でも給与差はさほど生じず、全ての方にとってデカセギに行くのがよい条件とは言えない」と構造の変化を指摘する。
2月2日の予算委員会で、安倍首相は四世ビザについて「前向きに検討していきたい」との答弁をした。さらに4月10日付け日本経済新聞電子版によれば、経団連の榊原定征会長は記者会見で人手不足への対応を問われ、「日系人に日本で働いてもらう」とコメントした。四世ビザが解禁されれば大きな追い風となり、増加する可能性はありそうだ。
とはいえ、永井専務理事は「このビザが解決されない限りは、基本的にはどんどん減っていく傾向にある」と言い、「ブラジル経済が持ち直せば増加スピードはさらに鈍化していく」と見ている。
昨年末時点での日本における中長期滞在の在留外国人は、合計238万2822人となり、過去最高を更新。国別では、在日ベトナム人が19万9990人となって、在日ブラジル人数を抜いた。現在の順位は中国、韓国・朝鮮、フィリピン、ベトナムに次いで、ブラジルは第5位となっている。
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昨年末現在の在留外国人統計でブラジル人を県別に見ると、1位は愛知県の5万1171人と圧倒的に多い。2位は静岡県の2万6565人、3位は三重県の1万2445人で、この上位3県だけで全ブラジル人の過半数を占める。岐阜県(1万0381人)を加えた「東海地方」では10万人の大台を超える日本最大の集住地区だ。関東地方では群馬県が全国4位の1万2243人を中心に、神奈川県8448人、埼玉県7288人。東海地方に続く集住地区を形成する。市町村別では、ざっと見たところ静岡県浜松市の9165人が最多だ。静岡県在住のブラジル人の3人に1人が同市に集中する。ブラジル総領事館が浜松市にあることに納得か。