23日付エスタード紙の経済面トップは《ラヴァ・ジャット(LJ)作戦で疑惑を指摘された企業は、この3年で60万人弱を解雇》と報じた。最多解雇をしたのはペトロブラスで、13年12月に44万6千人いた社員が昨年末には18万6千人と、約26万人減、マイナス58%になった―との記事だ▼考えさせられたのは、その後のエコノミスト、エドゥアルド・ジアネッチ・フォンセッカさんへのインタビュー記事だ。《ジウマの政策失敗のつけは、LJ作戦のそれより大きい》というもので、「その通り!」と思わず膝を叩いた▼いわく《現在の不況と失業の原因をLJ作戦と考えるのは、間違いだ。LJ作戦と関係なく、経済危機と大失業は起きたと考えるべき》とし、LJ作戦は《主因ではない。それは危機の「症状」であって「原因」ではない》とのこと。さらに《ジウマ政権の経済政策の無能さのツケは、全汚職の合計よりもはるかに大きい。足元にも及ばないと言っていい》と断言する▼それは《電力、石油、ガス分野への間違った介入》と指摘する。ペトロブラスが市中のガソリンスタンドに卸す価格を、採算の合わない安い金額に政府がムリヤリ統制したこと。電力企業に強制的に値段を引き下げさせたことなどを指している▼それを読んで、PT政権がミンニャ・カーザ・ミンニャ・ビーダのような採算の取れない公共事業、事実上の福祉政策を連発し、インフレ率以上に最低賃金を毎年上げ、PT支持基盤である公務員の年金を手厚く増やし続けたことなど、政府自らインフレ要因を作ってきたことを思い出した。インフレを抑えるために金利がどんどん上昇する中、その出費を続けるために多額の国債を発行し続けたことで国家財政が大赤字になった。だから来年度の中央政府会計の赤字見通しが膨らんで1290億レアルになった▼ここ10年で年金システムも採算がおおきく崩れ、改革しなければ10年後には破綻しそうなところまで来た。ジウマ政権末期の昨年3月27日付エスタード紙にも《連邦公務員98万人への年金支出(929億レ)は、INSSで扱う3270万人分(903億レ)とほぼ同額》と公務員年金支出が激増した件の記事が出ていた▼このように公務員が問題なのに、今回の年金改革では軍人や州市公務員は除外された。一般人の年金システムINSSは支払い条件が厳しく抑えられる中、一番問題含みの公務員らはそのまま…。総額は抑えられるから「改革」といえなくもないが、優遇者をそのままにすることで結果的に「格差が拡大する」―つまり改悪でもある▼現在の経済後退は、LJ作戦が主たる原因ではなく、ルーラ/ジウマ政権の経済政策にある。なんでもかんでも贈収賄のせいにして、「汚職政治家が罪に問われて刑務所に入れば一件落着」という単純な話ではない。政策の失敗と、倫理や道徳の問題を混同してはいけない。ジウマ時代の政策自体のどこが失敗で、それを繰り返さないためにはどうしたらいいか―という議論が本来もっと必要だ▼国民にとっては倫理や汚職の方が理解しやすく、「フォーラ××!」と単純明快に叫べるデモに参加したがる傾向が強い。次の28日(金)にもCUT(中央労組)系の組合が全伯ゼネストを呼びかけている。年金改革に反対するカトリック大司教まで賛同の声を上げているから、やっかいだ▼前述のフォンセッカさんは今の経済政策スタッフをほめるが、問題は議会運営だと指摘する。確かに良いアイデアがあっても、実行できなければ意味がない。《オデブレヒト社司法取引証言が公表されたら、連邦議会での運営能力がガタガタになることを、テメルは知っていた。だから先々週までに、通すべき案件(年金改革、労働法改革等)があったが、できなかった。捜査が進むに従い、彼の政治的求心力はさらに落ち、議会運営は麻痺する》と悲観的だ▼最近、トンネルの出口が見えた気分になっていたのが、彼の見方を読んで、再び暗闇に叩き込まれた。なんとか光明は見えないものか―。(深)