【リオデジャネイロ共同】第2次大戦後にブラジルの日系移民の間で「日本は戦争に負けていない」と信じるグループと、敗戦を認めるグループが衝突し、多くの死者を出した「勝ち組負け組」事件。その背景を追った「『勝ち組』異聞―ブラジル日系移民の戦後70年」(無明舎出版)をサンパウロの邦字紙ニッケイ新聞編集長の深沢正雪さん(51)が出版した。
事件では20人以上が死亡。「狂信的なテロリスト集団が負け組を殺傷した」という構図で語られることが多い。深沢さんは「そこまで一方的な事件だったのか」との疑問から取材を始め、約10年間の間に同紙に掲載した連載を本にまとめた。
同書では、戦時中にブラジル政府から弾圧され、日本政府からは「捨てられた」と感じ、帰国したくてもできなかった移民らの不安が事件の背景にあることが解き明かされる。負け組がブラジル警察などと協力して「勝ち組」を弾圧していたとみられる例も紹介した。
深沢さんは「勝ち負け抗争を理解することで、ナショナリズムとは何かを考える助けになると思う」と話している。