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サンパウロ市=交通事故で命を落とす歩行者3割増=幹線道路の最高速度引き上げの影響か

 サンパウロ市では今年第1四半期に、交通事故による歩行者の死者が、昨年同期比で3割増えたと28日付現地紙が報じている。今年1~3月にサンパウロ市内での交通事故で死んだ歩行者は104人で、昨年は80人だった。

 今年就任したドリア新市長は、市内を走る二つの主要幹線道路マルジナル・ピニェイロスとマルジナル・チエテの制限速度を1月25日に引き上げた。ハダジ前市長が大論争の末に15年にいったん引き下げたものを、選挙戦中の公約に基づいて戻したものだけに議論を呼びそうだ。1月に交通事故で死んだ歩行者の数だけを比較して見ると、今年は24人で、26人だった昨年よりもむしろ減っている。だが、2~3月を比較すると、昨年の54人から今年は80人へと48%も増えている。

 歩行者の交通事故死はサンパウロ市全体で発生したもので、二つの幹線道路では車やバイクに撥ねられて死んだ歩行者はいなかった。ただし、幹線道路での制限速度引き上げが、間接的に歩行者の死亡事故増加を招いたと見る交通関係の研究者もいる。

 サンパウロ総合大学の交通工学修士号を持つオラシオ・フィゲイラ氏は、その一人だ。「二つの幹線道路では監視員が増えたが、その分、他の監視が手薄になった」とし、「サンパウロ市交通工学公社(CET)職員による違反摘発の少なさに着目した方が良い。獲物が死ぬのを待つハゲタカのように、彼らは事故発生を受身で待っているだけ」と指摘。幹線道路にCET職員が増えたことが監視の厳格化や安全性向上に直結していないと分析する。

 これに対し、CETは幹線道路安全向上プログラムを通して、幹線道路での安全性向上、運転手の意識向上活動、案内板表示を行っていると反論している。

 都市工学者のリカルド・コッレ氏は「例えばパリ市内は40~50キロ、ここのような50~90キロは存在しない」と比較し、「幹線道路の速度を下げると、その周辺の道路を走る車の速度も下がり、周辺道路での事故が減る」という相乗効果を期待している。