「ジャパン・ハウスを21世紀型の新しい文化交流モデルに」―。先月30日についに開館した日本政府の文化広報施設「ジャパン・ハウス」(以下JH)の運営陣は2日、記者会見を開き、その考え方や事業運営について説明した。
会見には、平田アンジェラ同館長、中前隆博在聖総領事、外務省戦略的対外発信拠点室の中原直人室長、原研哉総合プロデューサー、マルセロ・ダンタス企画局長、ネリー・カイシエタ広報局長が出席し、ブラジル・メディアを中心とした約50人の記者団に趣旨を説明した。
「檜」と「和紙」が使用された斬新な設計や、展示や物販などに注目が向けられがちだが、中原室長は「JHとは建物や物のことではない」とばっさり。「日本を素材に世界を豊かにするヒントを見出す。才能が集り新しい未来の可能性を拓くプラットフォームになる」と強調した。
さらに今後の運営については、「多様であり、柔軟であることが重要。開かれた運動体として、人々が共に創り出してゆくことが活動の源泉になる」として、共同研究、学術提携、新たなビジネスの創出や、世界共通の課題への取組みなどを通し、「世界に新しい和を作っていきたい」とした。
また原総合プロデューサーは、「分かりにくい日本を見せるために類型的なものを見せる文化紹介は慎みたい」として、「いかに日本を知らなかったかに目覚める。分かりにくくとも、深い理解に達したときに衝撃を受ける」と文化紹介の仕方に、これまでと一線を画したという。
実際に『竹』展示を手掛けたマルセロ企画長は、「いわば日本のサシ・ペレレをブラジル人の心に刻み付けることが自分の仕事だった」と苦悩を明かし、「日常に溶け込み隠れた存在であるがゆえに日本人ですら気づかない」という『竹』が、日本の精神文化を体現するものと捉えたからこそ題材となったと言う。
「日本には5千以上の利用法があるのに、竹林資源豊富なブラジルでは、竹竿だけしか用途を知らない」と言い、「どのように竹が使用できるのかを目で見て、そこから多くの着想を得てもらえれば」と期待を語る。
アンジェラ館長も、「JHを通じて、両国がともに経済力をつけて発展していければ」と語るが、事業継続は19年3月まで。来場者数など各種指標を総合的に評価し、その後の継続是非が判断される見通しだ。
2年後には結果が求められる重責のなかで、「3トンの重荷を背負っているようだ」と語る一方、「日本政府をずっと頼りにするつもりはない。伯政府や企業からの支援も獲得しつつある」として、「皆が一丸となって目標値を達成する。JHは永遠に続く。100周年には魂となって祝いたい」と気概を見せた。
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薗浦外務副大臣が以前、来伯した折、2年後に継続の是非を判断する指標として「来館者数、発信力、広告効果、知日派の数を総合的に判断する」と語っていた。今回記者団から「具体的な目標数値を教えてほしい」との質問が出たが、ベラベラと流れるような応答はするが、いつまで待っても肝心の具体的な数字は出てこなかった。中には「はっきりしない方が、継続の是非の判断を良い方にしやすいんだろう」と推測をする記者も。説明も抽象的な話ばかりで、今年後半の具体的な展示やイベント予定の発表もなし。とはいえ、まだVIP向けの開館式をしただけであり、今週末の「一般公開」からが本当の始まりだ。