ホーム | コラム | 樹海 | 《ブラジル》爆弾発言「仕切っていたのはルーラだ」

《ブラジル》爆弾発言「仕切っていたのはルーラだ」

司法取引を申し出たドウッケ被告(5日の訊問動画から)

司法取引を申し出たドウッケ被告(5日の訊問動画から)

 「彼はこのエスケーマ(ペトロロン汚職のやり方)を全て知っていた。それどころか仕切っていた」――2015年3月に逮捕以来、ずっと否認を続けてきたペトロブラス元役員、レナト・ドゥッケ被告がこの5日、そう爆弾発言をした。長期勾留が堪え、司法取引をする気になって、急に口を開いた。別人のように痩せ、髪も真っ白になっていた▼6億レアルの賄賂授受に関与したと見られ、計50年以上の懲役判決が出されている人物だ。ペトロブラス社(PB)がセッチ・ブラジル社と石油プラットフォーム建設契約をした際に、賄賂のやり取りをした件だ。模範囚で過ごしても10年以上の禁固が予想される。それよりもGPS電子足輪付でも自宅で過ごしたいと気持ちを切り替えたようだ▼5日の証言によれば、ラヴァ・ジャット作戦が始まっていた2014年、コンゴーニャス空港でルーラから「お前はSBMからの金をスイスの銀行口座で受け取ったのか」と聞かれ、彼は「いいや、SBMの金は受け取ってない」と答えたという。ルーラは彼の方を向き「石油プラットフォームの(金)は何か関係ないのか」というので、「関係ない」と返事をすると、「いいか、気を付けろよ。あってはいけないものは、あってはいけないんだ。分かったか。お前の名前で何もあってはいけない」と釘を刺したという。その時、ルーラは「PB元幹部がSBMの金をスイスの銀行で受け取ったと証言したとの話を、ジウマが聞いて心配している」といい、それをなだめるために確かめたらしい。そのとき、ドゥッケは「彼らはこのエスケーマに関する完璧な認識があると直感した」と証言した▼ドウッケはさらに「PT政治家は全員、PBと企業の大型契約から政党へのお金が入っていると知っている」と語り、総額の1%が賄賂で、その3分の2がPTで、残りが「カーザ」(ドゥッケらPB幹部)だったと証言した▼これに対し、ルーラの弁護士は「司法取引を申し出た人物はみな、誰かの悪事を捏造しないと自分が減刑にならない。その種の典型ともいえる証言だ」と頭から否認した。5日晩のジョルナル・ダ・クルツーラのニュース番組で、哲学者ルイス・フィリッペ・ポンデ氏は「メンサロンの時からルーラは『何も知らなかった』をひたすら繰り返してきた。今回もそうだろう。そんなことより、ボクが気になるのは、そんなルーラに投票動向調査で29%の国民が入れると言っている現実だ。まったく理解不能。国民のこの感受性の無さに愕然とする。どうして3割も…。我々はさんざ政治家を嘆いてきたが、国民もだ」との厳しいコメントを吐いた▼もう一人のコメンテーターのサンパウロ州連邦検察官のロベルト・リヴィアヌ氏は「アメリカの裁判でウソの証言をすれば、大変厳しく罰される。でもブラジルの司法は異なる。容疑者がウソをつくのは権利なんだ。ルーラが『オレは知らない』と言い続けることは、彼の自己弁護の権利だ」と法的な説明をした。だが最後に「かつてあるコメディアンが汚職政治家の代名詞的人物マルフィの役をしながら、こう言ったことを思い出すよ。自分を指差して『俺は今、ここにいない」。…そこまで言えるんだ」と呆れたように言った▼ドゥッケ被告は5日の証言の最後で、「もう2年2カ月も刑務所にいる。演劇にたとえれば、俺は重要な役を演じていたかもしれないが、決して主役級ではなかった。知っていることは全部しゃべる」と司法取引を申し出た▼パロッシ元財相までもが司法取引を持ち出した直後、最高裁第2小法廷では、重要なPB汚職被告のジルセウら3人に人身保護令適用を認め、刑務所禁錮から自宅軟禁に軽減した。それに賛成したのはCUT(中央統一労組)元法律顧問のトフォリ判事、ジウマ弾劾裁判では職責剥奪するが政治生命を残す玉虫判決を出したレヴァンドウスキ判事、「政権寄り」と噂されるメンデス判事…。まるでパロッシが暴露することを恐れて、人身保護令の適用拡大の伏線を引いたのかと疑いたくなる怪しいタイミングだ▼息苦しい駆け引きが続く中、いよいよこの10日、モーロ判事がルーラと直接対面して訊問する。問いただしたいことは山ほどあるだろう。(深)

 

参考動画=レナト・ドゥッケ被告の尋問の動画

https://www.youtube.com/watch?v=NXjZJoZTSDE