【既報関連】保健省は11日、ジカ熱の国内緊急事態宣言を解除したと12日付現地紙が報じた。この決定は、16年2~11月に世界規模の緊急事態宣言を出していた世界保健機構(WHO)にも伝えられた。
ジカ熱はネッタイシマ蚊が媒介する感染症で、緊急事態宣言は15年11月に出されていた。
緊急事態宣言解除は、蚊の発生源を絶つための周知活動など、これまでとられてきた予防手段が緩慢なものになったり、ジカ熱患者へのケアが怠られたりするのではないかと案ずる専門家の間に懸念を引き起こした。
これに対し保健省は、緊急事態宣言の解除はあくまでも、感染状況が「想定外の規模で進んでいる」とまでは言えない状態に落ち着いてきたことを示しているだけで、依然、国内の公共保健機関にインパクトを与えていると説明した。
「非常事態宣言の解除は政治的判断ではなく、技術的判断」と語るのは同省伝染病監視部(DVDT)部長のジョアン・トレド氏だ。
今年に入ってから4月までの発生件数は7900件で、昨年の同じ期間の17万件と比較して95%以上減少した。
ジカ熱との関連が疑われている小頭症も、発生件数が大幅に減った。発生急増が騒がれ始めた15年11月以降に確認された小頭症児は2653人の内、今年になって確認されたのは230人のみだった。
ペルナンブッコ連邦大学のカルロス・ブリット教授は、感染状況は緊急事態宣言を出すほどの規模ではなくなったが、気がかりな状況は続いているとした。同氏は、ブラジル国民の半数はジカ熱に感染する可能性があるとして、数年後に再度、ジカ熱が流行する危険性があると語った。
ブラジリア大学のデボラ・デニス教授は、ジカ熱感染が拡大する危険性は残っており、ジカ熱に感染した女性や子供が政治や行政の保護を充分に受けられない状態が続いていると警告した。「緊急事態宣言の解除によって、『もう済んだこと』と片付けられる危険性がある。まだ危機は去っていない」と語る。