「ああ、今日はとんでもない金曜日だ。こんな話は聞いたことがない。司法の最高機密であるラヴァ・ジャット作戦(LJ)の進展状況、つまり最も伝わってはいけない極秘情報が、最もあってはいけないルートを伝わって流れた。最もありえない種類の犯罪だ」――12日晩のジョルナル・ダ・クツーラでロベルト・デルモント弁護士は、そう頭を抱えた▼今まであまり具体的容疑が出ていなかったジウマ前大統領だったが、ついに泥沼に突き落とされた。ジウマ/ルーラの選挙参謀ジョアン・サンターナの妻モニカ・モウラ被告が、司法取引供述(デラソン・プレミアーダ)で、一部始終を語った様子が報じられ、夫の右腕として選挙資金の裏金の調達や運搬などをしていた生々しい証言映像がテレビから流れた時だった▼しかもモニカは「エドゥアルド・カルドーゾ(当時の法務大臣)から捜査情報を逐一聞いたジウマが、それを私たちに伝えた」とはっきり証言した。大統領と法務大臣がグルになった最高機密漏えいを証言する映像が、これだけ大々的に報じられるブラジルという国の、あきれるほどの公明正大さに驚くばかりだ▼「誰にも知られない連絡方法を考えてくれ」とジウマに依頼され、モニカは、その場で大統領官邸図書館の大統領用コンピューターを使って、Gメールのアドレスを作ったという。ジウマとの連絡方法は、シンプルにして巧妙なもの。「2606iolanda@gmail.com」とのメルアドを作り、2、3人しか知らせない。ジウマがLJの情報を比喩で伝える新規メールを書き込み、それを送信せずに「下書き」に保存する。モニカはその下書きを読むのだ。そしてその逆をして返事を返す。送信していないので米国情報局にも知られにくいようだ▼11日22時8分G1サイト電子版によれば、ジウマは一時、大統領選の負債が1千万レアルもあり、そのうちの500万レアルを、なんと現金でオデブレヒト(O)社が指定した人物とサンパウロ市のショッピングセンター内で待ちあわせて、モニカが受け取った。「実にプロフェッショナルな渡し方だったわ。私が居場所を言うと、向こうが暗号を伝えてきて、それをその初めて会う人物に言うと、現金を渡された」。それで500万レアル(約1億8300万円)をポンと。まるで映画の世界だ▼モニカは「2014年の大統領再選キャンペーンの隠し口座は全部で3500万レアル。ジウマは大統領官邸の中でも裏金支払いの打ち合わせをした」「3500万レアルの裏金の支払いは、全てオデブレヒト社の責任であるという明白な認識をジウマは持っていた」「1千万レアルはブラジル国内のホテルなどで手渡されたが、LJ作戦が進展したために2500万レアル分は未払い」とも語っており、これが本当なら、現役大統領がとんでもない巨額な裏金を動かしていたことになる。そのO社との資金のやり取りを任せていた重要人物だから、逮捕されたら困る。逐一、捜査の進展状況を伝えていた訳だ▼昨年2月19日に、ドミニカにいた二人は自分たちが逮捕されることをジウマから知らされ、実際に同22日に逮捕令状が執行され、23日に帰伯して連邦警察に出頭したと証言している▼先週12日には、LJ作戦の一貫で、ついに「最も触れてはいけないパンドラの箱」と言われたBNDESへの捜査が始まった。同日「ルーラ三銃士」の一人パロッシ元財相が司法取引証言に詳しい弁護士を雇い直した。ゼネコン関係者からは、彼が「ルーラの裏金操作の責任者だった」と証言されている。すでに「あってはいけない話」が十分に出てきたと思っていたが、実際はこれからが正念場だ。奈落の底は、想像以上に深い…。(深)