ブラジル日本ガストロノミー(美食)協会(以下ABGJ、中岡フラビオ会長)が今月15日にサンパウロ市の愛知県人会で、協会発足の主旨説明会を行った。日本料理協会(ABCJ)を前身とし、「日本食料理店を先導する」と意気込む中岡会長(44、三世)と相川ジェルソン健二副会長(33、三世)に同会の目的や活動について取材した。
日本食レストランオーナーの河内ウーゴさんが会長を務めていたABCJが2005年に解散した後、JICA研修員OB会の副会長でもある中岡さんは会の再発足を求める多くの日本食レストランの相談を受けた。多くの相談者から「ブラジルの日本食の質が徐々に低下している」などと切々と訴えられた中岡さんは、自分も協会設立の必要性を感じ、昨年から準備をはじめた。
20年来の友人でありコンサルタント会社に勤める相川さんに副会長職を頼み、同会役員を揃えていった。中岡さんは「会の発足からずっと駆け足で準備している。前の会は役員全員がレストランのオーナーなどで各自仕事の方が忙しく、結局満足できる活動が出来なかった」と話した。
ABGJの役員にレストランオーナーや店長は参加していない。「前のような失敗はしないようにした」と役員を選出した際の注意点を述べた。日本食業界で働くブラジル人料理人などに会員になってもらいたいと考えている。
役員を揃えたABGJは現在、委員会と後援者、会員探しに奔走している。「委員会」には日本食のプロを迎えて、同協会が主催する料理方法や接客の仕方、日語などの講座で講師をしてもらう。小池信シェフなどと交渉済みだという。料理人個人が会員になれるので、講座を受けて技能を磨き、より有名店で働く足がかりになる。
また、委員会メンバーらと話し合い、日本料理店のチェック項目を作成している。「調理や食材の保存方法、職員の日語能力など。リストの4~5割に合格すれば『ABGJ公認レストラン』となる」とした。
中岡さんと相川さんは「私達は日本食ではなくビジネスのプロ。全てのレストランオーナーがビジネスに長けているわけではない。日本食料理店の前に立ち、コンサルタント的な役割が出来たら」と語った。
また、ABGJ設立理由について「ブラジルの食文化は様々な国のものが混じり味や調理法が変わっていく。だからABGJは日本食の正誤をつけるための協会ではない。しかし『健康的だ』ともてはやされて儲かるからと、たいして知らないまま開店し、日本食について勉強する時間が取れていない場合も散見される。せめて基本を習える場所を設けたいと思い、会を設立した」と日本食への熱い想いを覗かせた。
ABGJへの問い合わせは(電話/11・3181・2862、メール/contato@abgj.com.br、住所/Av.Paulista, 807, 23 andar)まで。
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ABGJの副会長を務める相川さんは普段、サンパウロ市のコンサルタント会社で働いている。会の設立決定から日本料理店の調査なども担当したそう。相川さんは「サンパウロ州の日本料理店は3千、ブラジルでは1万1千店あり、内80%を非日系人が経営している」と強調する。「これからも増加し続けるであろう日本料理店が、変な風に日本文化を伝えないようにしたい。とはいえ、料理には創造性も必要。閉鎖的になりすぎてもいけなし、かといっては『何でもアリ』もダメ」と〃さじ加減〃の難しさに頭を悩ませているようだ。