ブラジル北部パラー州のパウ・ダルコの農園で24日未明に起きた銃撃戦で死亡したとされる土地なし農民10人の検死の結果、頭部や背中二銃弾を浴びた死体や、心臓に向けて至近距離から2発を撃ち込まれた死体がある事が判明した。
農園に不法侵入した土地なし農民が、警備員を殺し、農園の本部となる建物などに放火したという事実は、逮捕令状などを持った警官が正々堂々と農園に入る口実を与えた。だが、農園に着くなり、土地なし農民達の銃撃を受けたため、反撃したとの公式発表を覆すような事実が、次々と判明している。
その一つは、事件の翌日(25日)の報道で、「警官達は銃を撃ちながら農園に入ってきた」という生存者の供述が明らかにされた事だ。
連邦検察庁が26日に生存者から集めた供述の中には、「物音がしたから何事かと思って見に行った仲間が『警察が来た』といったから、全員が林に逃げ込んだ」「林の中で隠れ家を作ろうとしていたら、突然、警官が姿を見せ、『走るな、走れば死ぬぞ』と叫んだから、皆があわてて逃げ出したら、警官が撃ち始めた」「仲間が泣きながら『わかった、俺達は逃げないよ』と言ったら、警官が『何で逃げないんだ』と言いながらまた銃を撃った」「撃たれて倒れた仲間に止めを刺す前に、警官が『強盗共がどんな目に遭うか見るがいい』と言った」といった供述もある。
農民達は、自分達は反撃しなかったし、農園にあった武器は使っていない事、警官が仲間を殴っている音や、仲間を撃った後にたてた笑い声を聞いたという供述もある。
同州市警は、事件に関与した警官達は、裁判所からの逮捕令状などの執行のために同農園に赴いたのであり、農民達から撃たれたから反撃したのだから、正当防衛だとみなしているが、法務省は連邦警察官を派遣し、農民10人が殺害された背景などを調査させる事にした。
事件当日、農園に赴いた軍警21人と市警8人は、調査の進行を妨害したりしないよう、通常業務からは外されている。
ブラジル弁護士会パラー支部によると、当日の生存者は少なくとも8人確認されている。一説によると、事件当日、農園にいたのは25人で、そのうちの10人が死亡した。また、3人は今も行方不明だという。
生存者の内2人は同州南東部の病院に入院、加療中だが、本人達の供述は既に録音され、他の農民の供述と共に検察に届けられる。入院中の農民達は命には別状はなく、連邦警察官が身辺警備に当たっている。(29日付G1サイトより)