【既報関連】ブラジル地理統計院(IBGE)は1日、今年の第1四半期の国内総生産(GDP)成長率が、昨年第4四半期比でプラス1%(季節変動調整済み)だったと発表したと同日付現地紙サイトが報じた。
これは15年第1四半期から始まった、8期連続のマイナス成長以来、初のプラス成長で、定義上は景気後退(リセッション)を抜け出したことになる。今年第1四半期のGDP総額は、1兆6千億レアルとなった。
農業部門は直前の四半期比で13・4%成長し、21年ぶりとなる大幅な上昇を記録した。工業部門も3期ぶりのプラス成長(0・9%)を遂げたが、サービス部門はゼロ成長だった。
また、インフレ抑制と景気対策の調整弁である経済基本金利(Selic)も、5月31日の中銀通貨政策委員会(Copom)で1%ポイント引き下げられ、年10・25%となった。
中銀は昨年10月以降、インフレは抑制されているとみて、Selic引き下げを断行。Copom直前までは1・25%ポイントの利下げもささやかれていた。
しかし、〃5・17JBSショック〃後、ブラジルを取り巻く空気は一変した。市場関係者や外国人投資家たちは、テメル政権の社会保障制度改革を含む諸改革を支持していたが、現在の政権は延命に青息吐息で、反対勢力を押しきって改革を進められるかは未知数だ。
インフレ率の予想は今のところ、今年は4%、来年は4・8%と安定している。しかし、CopomはSelic決定と共に出した声明の中で、「不確実」の言葉を何度も使い、低インフレに支えられ、景気回復効果を目指して大きく下げてきたSelicの下げ幅を、今後は縮小させる可能性を示唆した。
同じく5月31日、IBGEは、今年2~4月の3カ月間の平均失業率は13・6%で、失業者の数は1400万人だったと発表した。昨年同期の失業者数は1140万人で、失業率は11・2%だった。
5月に労務省が発表したデータによると、4月単月では新規採用が解雇を約6万人上回ったが、これは正規雇用に限ったデータで、労働手帳に記録されない不正規雇用の数も含めると、失業者数は増えている。
2~4月の正規雇用者数は3330万人で、1年前より120万人減少した。正規雇用者には扶養家族も健康保険に加入できるなどの恩典も多いため、正規雇用者が解雇されると、同世帯からの求職者増を招くなど、失業率上昇への影響がより大きい。
ミシェル・テメル大統領も、エンリケ・メイレレス財相も、GDP成長を手放しで喜ぶ姿勢を見せているが、これはあくまで3月までの数字だから、畜産業界に打撃を与えたカルネ・フラッカ作戦の影響や、経済界全体に悪影響を及ぼしたJBSショックの影響は反映されていない。
国の財政健全化のための社会保障制度改革も、行方が全く見えなくなっており、第2四半期もこの成長傾向が継続するかは不透明だ。