最初の移民船「笠戸丸」がサントス港に到着し、日本人移民がブラジルの地を踏んでから109年―。今年も「移民の日」を迎え、ブラジル日本文化福祉協会(呉屋春美会長)とブラジル仏教連合会(佐々木良法エドアルド会長)共催による『開拓先亡者追悼法要』が、18日午後2時から文協大講堂で開催された。日系諸団体の代表者らを中心に約150人が参列し、先人の遺徳を偲んだ。
「日本人の心意気を子孫に」
釈尊讃仰会の木原好規会長の挨拶に始まり、厳粛な雰囲気の下、しめやかに執り行われた法要。珈琲農園のコロノとしてサンパウロ州奥地を開拓した先駆者を偲び、御霊前には参列者からの珈琲がびっしりと供えられた。
美和会、深山会による雅な邦楽演奏が華を添え、茶道裏千家が献茶、生け花協会が献花した。仏連コーラス部による声楽に導かれ、佐々木導師、諸僧、稚児らが会場後部から厳かに入場し、三帰依文復唱、焼香が行われた。
呉屋会長や中前隆博在サンパウロ総領事をはじめ各日系団体代表者らが先人への哀悼と感謝を述べるとともに、日系社会の発展に新たに誓いを立て、祭壇に手を合わせた。諸僧による読経が行われるなか、参拝者らは粛々と焼香を行った。
佐々木導師は、神戸港を出航する移民船で旅立つ者と見送る家族や友人を繋いだテープが途切れたときの先人の覚悟を想起し、「あの頃の先人のような勇気をなくしたと悩んでいるのが、今の時期ではないか」と参列者に問いかけた。
その上で「初代先祖の夢は果たされずとも、子供達はその背中をしっかり見ている。子供達の活動を見れば、その夢が果たされているのではないか」と語り、「日本人の心意気を子孫に継承し、ご先祖様に喜んでもらえるよう頑張りましょう」と鼓舞した。
法話を説いた浄土真宗本派本願寺の杣山哲英南米教団総長は、「一世の位牌の多くは幼子だった」と前置きし、「豊かになった今を生きる我々は、命を大切にしているだろうか。自分自身の命を見失わずにしっかり見つめる一日にして欲しい」と問いかけた。
サンゴンサーロ教会でミサ=デカセギ家族にも希望を
日本移民109周年記念ミサが18日午前8時から、サンパウロ市のサンゴンサーロ教会で行われた。日系団体代表者やカトリック信者ら約90人が参列し、日系社会の先駆者に感謝の念を捧げた。
ミサは日ポ両語で行われ、在聖総領事館の関口ひとみ首席領事、文協の呉屋春美会長、援協の与儀昭雄会長、商議所の平田藤義事務局長、県連の山田康夫会長が「国境、人種、文化、宗教などの違いを問わず、皆が神の民となって兄弟愛が促進されますように」「日系・ブラジル社会の礎となった先駆者らの生き様を若い世代に伝え、良き社会を築くことができますように」「日本及びその他の国々で生活するデカセギ家族が明日への希望を持ち、より良い家庭を築くことができますように」と共同祈願した。
ミサを執り行った尾崎アンドレ神父は「109年の移民の歩みを導いてくれた神様に感謝する。移民の日を記念するたび、ブラジルと日本移民の結びつきを感じる」と語りかけ、「様々な移民や宗教を受け入れるブラジルのように、移民もブラジル人も全てを超え、互いを愛し神の愛を受けられるように」と祈った。
参列者の熊坂はやこさん(86、二世)は「10年前から移民の日のミサに参加している。子や孫の世代の参加も増えて欲しい」と語った。
開拓者先没者慰霊碑で法要=「若い世代に日本人の誇りを」
移民109周年を向かえ、18日午前10時半からイビラプエラ公園でブラジル日本都道府県人会連合会(山田康夫会長)が主催する『日本移民開拓先亡者慰霊祭』が行われた。各日系団体、県人会代表者など約100人のほかサンパウロ日本人学校の生徒、父兄ら40人が参席した。
慰霊碑前には36県人会の過去帳が並べられ、ブラジル仏教連合会の佐々木エドアルド良法会長が導師を務めた。
挨拶に立った山田会長は「現在の日系社会の中心は三世、デカセギ労働者も増え続けている。日本に対する認識、理解は希薄になっているが、日本との交流を今まで以上に密にしたい。今日の慰霊祭は日系社会の未来を考える機会」と述べた。
佐々木導師は「来年は移民110周年を迎える。その歴史の中に含まれている教えを大事にしながら、若い世代に上手に伝えていくこと。若い世代に日本人という誇りを見せ、国づくりの力になる期待を与えていきましょう」と呼びかけた。
佐々木導師ら5人の読経が行われる中、焼香が行われた。
初めて同慰霊祭に参加したという日本人学校生徒の石井智果さん(13、東京都)と母の晴子さん(46、同)は、「ブラジルに住んで3年目となり、日系社会の話も色々聞くので参加した。全部日語で進行していて驚いた。良い話もたくさん聞けて参加して良かった」と微笑んだ。