米国のパリ協定離脱などで、地球温暖化や森林保護が再注目される中、テメル大統領が19日、議会が5月に承認した、16年発行の暫定令(MP)756号と758号の改定に、拒否権を行使したと19、20日付現地紙・サイトが報じた。
MP756号はパラー州にあるリオ・ノヴォ国立公園を拡大し、ジャマンシン国立植物公園を狭めるもので、最終的には法定アマゾン内の保護区域が66万7千ヘクタール増えるはずだった。
同植物公園内での活動は調査や持続可能な開発に限られ、88%の原生林が保護されている。ところが、上下両院の合同委員会が同公園の37%にあたる48万6千ヘクタールを環境保護区(APA)に変える事を承認し、環境省や環境運動家らが批判の声を上げていた。大統領はこの改定MPを全面的に拒否し、公聴会開催も義務付けた新たなMPを出す意向を表明した。
MP758号は、国道163号線と並行して走る鉄道170号線敷設のため、ジャマンシン植物公園の境界線を変更してAPA化するためのものだが、議会がAPA化する地域を10万ヘクタール拡大する事を承認したため、この部分に拒否権が行使された。
国立公園は域内全域が環境保護の対象とされ、経済活動も観光程度に限られる。国立植物公園は環境保護基準が若干ゆるく、種々の調査なども行われている。
一方、APAは水源地や川の近くなどの環境保護を命じるが、経済活動もある程度認められるため、国立公園や植物公園より土地の用途や保護のあり方の基準がゆるく、森林伐採などの環境破壊が進む可能性が高い。
アマゾン人間・環境院(Imazon)によると、APA適用が検討されていた地域では、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)が違法な森林伐採を摘発した区域が334カ所あり、既に7万1千ヘクタールの原生林が失われている。
テメル大統領は、MPへの拒否権行使後、ロシアとノルウェー訪問の旅に出たが、ノルウェーは法定アマゾン保護のための最大の資金提供国だ。同国は、法定アマゾンの森林伐採が現在のペースで進むなら、森林保護のための資金提供停止もありうると示唆していた。