【既報関連】労働法改正法案の上院本会議採決が11日に行われ、賛成50、反対26、棄権1の賛成多数で可決したと、12日付現地各紙が報じた。
同日の上院本会議は、午前11時の開始早々、採決阻止を試みる野党のグレイシー・ホフマン上議(労働者党・PT)、ヴァネッサ・グラッツィオッチン上議(共産党・PCdoB)らが議長卓を占有し、エウニシオ・オリヴェイラ議長(民主運動党・PMDB)が議事進行中断を宣言せざるを得ない状況となった。
その後も野党議員たちは議長卓に留まり続けたため、議員たちは本会議場から退出、本会議場の照明も落とされた。
6時間以上に及ぶ中断後、審議が再開された。投票結果は、賛成50、反対26、棄権1と余裕を持っての可決だった。
既存の労働法に100以上の改正を加えた新法はテメル大統領の裁可待ちとなり、裁可から120日後に施行される。
テメル大統領は、同法案が上院で修正され、下院再審議となることを防ぐため、可決後に項目別拒否権行使、暫定令(MP)発令などで、内容の調整を行うと約束し、今回の可決にこぎつけた。
しかし、下院では同大統領への告発受理、裁判開始の是非を問う手順が進行中で、これが通ってしまうと、テメル大統領は停職となってしまうため、大統領は、拒否権行使を含む裁可やMP発令を急がねばならない。
企業家中心に支持を得た労働法改正案は、「雇用者と労働者の契約関係を柔軟化させる」との趣旨が一貫しており、推進派は「労働者側に選択の幅が増えた」という。だが、反対派は「労働者の権利が弱められたにすぎない」としている。
同法案には、組合税廃止、労働訴訟発生を抑える項目、労働高裁の判決に制限を加える項目、有給休暇の分割取得、自宅勤務の法的定義と規範などが定められた。通勤時間や昼食休憩、就労準備時間の扱いも変わる。
法案にはあるが、拒否される見込みなのは、時間区切りでの労働契約を認める条文と、妊婦や授乳中の母も、本人が望めば、健康的ではない環境での労働を認める条文だ。また、労組の反発が大きい組合税廃止は、一度に全廃せず、段階的に廃止するよう、周囲が大統領に助言している。
労働法改正案の議会通過は、未だテメル政権に改革を進める余力が残っていることを示したが、さらに大きな課題である社会保障制度改革は、全議員の6割以上の賛成が上下両院で2回ずつ必要なため、承認は困難だと見られている。