12日、パラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事がルーラ元大統領に対し、サンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介した収賄容疑で、9年6カ月の実刑判決を下した。12日付現地紙サイトが報じている。
今回の判決は、サンパウロ州グアルジャーの三層住宅の購入費と改修費、大統領官邸を引き払うときに運び出された荷物の運送費とその保管経費、計370万レアルは、建設大手OAS社からの賄賂に当たるとして告発された件に関するものだ。
検察庁は、ルーラ氏は大統領在任中にペトロブラス社の理事や役員の指名権を行使し、建設大手によるカルテルに便宜を図ったと指摘。OASが参加するコンソーシアム(企業体)はこの時期、パラナ州のジェツリオ・ヴァルガス製油所やペルナンブコ州のアブレウ・エ・リマ製油所の建設などの事業契約を得た。
OASはルーラ氏に対し、サンパウロ州グアルジャーのコンドミニアム内にあった、故マリーザ夫人が購入権を持っていた一般住宅の代わりに、より高額な三層住宅を取り分け、購入価格の差額分とその改修費など、計276万レアル(別記事では220万レアル以上)の贈賄を行ったとされている。
ルーラ氏は同件と、大統領官邸から運び出された荷物の保管料など131万レアルの収賄罪とで2016年3月にサンパウロ州検察局に逮捕請求された。だが、同件はラヴァ・ジャット作戦に関連しているとの理由でパラナ州連邦地裁に回された。
この際、ジウマ前大統領がルーラ氏を官房長官に指名し、地裁管轄を逃れようとしたとの疑惑で国がパニックとなった。この指名はジウマ大統領の罷免の間接的要因ともなった。
ルーラ氏弁護側は「OAS社には提供できるような物件がなかった」「住宅の所有者はルーラ氏ではない」「OASは住宅の財政的権利を2010年に連邦貯蓄銀行のファンドに委譲している」などの根拠でルーラ氏無罪を主張していた。
だがモロ判事は「元大統領は自分の名義を使わず、金銭を媒介しない形で、自身と夫人(17年2月死去)に恩恵を受けようとした」とし、「きわめて複雑で、多岐にわたり様々な工作を行った犯行」とし、9年6カ月の実刑判決を下した。
また、OAS社のレオ・ピニェイロ元社長、元専務のアジェノール・フランクリン・メデイロス両被告にも実刑判決が下された。
ただ、ルーラ研究所所長のパウロ・オカモト氏やOAS社の他の被告の贈収賄容疑や資金洗浄容疑は、証拠不十分で無罪となった。さらにルーラ氏に関しても、荷物の運送費や保管経費に関しては無罪となった。
今回の判決はまだ1審目で控訴が可能なため、ルーラ氏は現時点では逮捕されないが、2審で有罪となれば逮捕される。そうなれば、現在世論調査で同氏が圧倒的な支持率を得ている18年大統領選も出馬不能となる。
ルーラ氏に関する裁判は、モロ判事の管轄のものがあと二つ。連邦直轄区地裁でも3件の裁判が控えている。