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カリスマ医師、日野原重明氏を偲ぶ

 7月18日、超遅咲きのカリスマ医師といわれた日野原重明氏が105歳で亡くなった。聖路加病院名誉院長で、地下鉄サリン事件の際、サリンガスに違いないと最初に気づいた医師だ▼日野原医師は97歳だった08年に、移民100周年の記念事業の一つとしてブラジルに招かれ、複数の場所で特別講演なども行った。「日野原先生は『増やすなら微笑みのしわを』と話された」(ロンドリーナ市のコーラスの指導者、田中宏枝氏に関する12年2月4日付記事)など、同医師と交流した方のいる事を示す記事やコラムが弊紙にも残っている▼100歳を過ぎても3年先までスケジュールが一杯で、常に、10年、20年、30年先を見据えて行動した日野原氏は、生涯、現役の医師であり続けた。老いてもなお新しい交友関係を築く事を積極的に後押しする「新老人の会」を設立したり、『子どもを輝かせる100のお話』などの子供向けの本を執筆したりもしていた。「子どもを輝かせるためにアートを」と題した頁には、「成長する子どもに 欠かせないもの それはきれいな空気 きれいな水 天からの風と そして緑の山と野」という文もあるし、「葉っぱのフレディ」というミュージカルに自らも参加し、命の大切さを教える活動なども行った▼「人の価値は、その人が集め、蓄えたものではなく、その人が与え、残したもので決まる」と言われた事がある。そういう意味で、日野原氏が残した言葉や著作、その生き様が、直接、間接に同氏と接した人々に与えた力や思い出は、同氏の価値のものさしのひとつと言えるだろう。最後まで前を向き、人々に力や希望を与え続けた同氏に倣う者でありたい。(み)