【既報関連】州都リオ市を中心に、治安が悪化しているリオ州で、7月28日から8500人のブラジル軍兵士がリオ大都市圏の警備を開始したと、7月29~31日付現地紙・サイトが報じた。
ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)はビデオメッセージの中で、「リオ州の治安悪化は国民全てを不安にさせ、国民を憤らせている」と語り、特別大統領令を出して、治安保障法(GLO)に基づく軍の展開を許可した。官報には軍派遣は12月31日までと記されているが、延長される可能性が高い。7月30日にリオを視察した大統領は、駐留期間を18年末まで延長する可能性を示唆した。
リオ州には、国軍兵士派遣の直前にも、国家治安部隊(FN)620人と、連邦道路警察(PRF)380人が増援されていた。
ラウル・ジュングマン国防相は、「今回の軍兵士の役割は、25年前の国連環境会議から、リオ五輪関連警備(16年10月の地方選まで延長された)までのそれとは異なる」と語った。
「我々の活動の主軸は諜報活動だ。それを通して得られる情報こそが、犯罪が起きてから対処するのではなく、犯罪組織がそもそも悪事を働けないように攻撃する糸口になる」と国防相は語った。これまでは、兵士たちが一時的に治安に問題のある地域に入っても、そこから撤退すると元の木阿弥になっていた。今回は、犯罪組織の情報収集、諜報活動に重点を置き、リオ市警やリオ軍警が利用できる様にする意向だ。
最近になってリオの治安維持活動に軍が参加した事例の中で最も代表的なのは、15年の4~6月に行ったマレー地区の複合ファヴェーラ鎮圧作戦だが、軍が引き上げた後の同地区の治安は再び悪化してしまった。
しかし、「実際のところ、兵士たちの活動は、要所要所を局所的に警備しているだけに留まっている」と地元紙の分析は手厳しい。
連邦政府主導による軍兵士起用は、経済危機による、殺人や強盗などの犯罪急増を受けて決まった。5月の場合、強盗は昨年同月比41・36%増、故意の殺人は14・9%増、警官との銃撃戦での死者も15・47%増えている。
最近のリオ州での犯罪では、犯人たちがライフルや手榴弾など、重装備を備えている事が多い。同州では今年だけで、91人の軍警が死亡しており、この数は昨年全体よりも多い。一般市民や子供も、警察と犯罪集団との間の銃撃戦に巻き込まれて死亡している。
ジュングマン国防相によると、作戦の第一段階は作戦実行地帯の情勢を詳しく把握することだ。兵士は州全体に配置されるが、作戦はリオ大都市圏を重点的に行われる。また、初期に集めた情報を基に、局所で作戦を展開し、市警や軍警の働きを強化するという。国防相は「作戦の目的は、犯罪組織の中枢に打撃を与え、幹部の身柄を押さえる事だ」と語った。