【既報関連】2日に行われた、テメル大統領に対する連邦検察庁からの告発受付の賛否を問う下院での全体投票の結果、反対が規定(171票)を上回る263票を獲得した。これにより、テメル大統領は停職処分を免れた。3日付現地紙が報じている。
2日の投票は、夕方までは延期を求める野党側の抵抗にあって実施が遅れていたが、投票の際の見解表明を各下議が短縮したため、午後10時頃には結果が判明した。
投票結果は、「告発受け入れに反対」としたパウロ・アビ・アケル報告官(民主社会党・PSDB)への賛成が263票、反対が227票、棄権2票、欠席19票で、告発反対への支持が全体の3分の1を超えたことにより、テメル大統領への告発が却下された。
この結果に対し、テメル大統領は、「今回の勝利は個人によるものではなく、民主主義に則った法の勝利であり、議会や憲法の勝利だ」との見解を述べた。
今回の投票に際し、大統領や連邦政府は、連立の各政党に対し、強い忠誠を求めていた。その結果、大統領の民主運動党(PMDB)が賛成に53票投じたのをはじめ、進歩党(PP)が37票、共和党(PR)が28票、民主党(DEM)が23票、社会民主党(PSD)が22票といった具合で、告発拒否に大きく貢献した。
ただ、かねてから連立離脱の噂が出ているPSDBは、賛成の22票とほぼ同数の21票の反対票を投じ、今後の大統領との関係に亀裂を走らせた。また、前述の連立党の中でも、「裏切れば罰則」の通達がありながら裏切った議員たちも少なくはなかった。
今回の投票では、告発却下に賛成した議員たちの間でも、テメル氏自身の収賄容疑に関する潔白さよりも、政治や秩序の安定の大切さを主張する議員が目立っていた。
今回の投票でテメル大統領への告発を下院が受け入れ、最高裁もその結果を認めていたならば、テメル氏は刑事裁判の被告となり、180日間の停職処分となるはずだった。停職処分中はロドリゴ・マイア下院議長が大統領職を代行。正式に断罪された場合には、間接選挙で選んだ大統領が継ぐことになっている。
だが、間接選挙で選ばれた大統領が継承する時期は早くても来年の2月で、10月には直接選挙での大統領選ということもあり、短い在任で終わる。現状で経済も回復しつつある最中に、あえてそのような不安定な状況を招く必要があるのか、という疑念の方が議会の中では強いようだ。
連邦検察庁のロドリゴ・ジャノー長官は、退任する9月中旬までにテメル氏に対する次の告発を行うと予想されているが、秩序の安定を求める議員たちの力を覆せるかがカギとなりそうだ。