【既報関連】テメル大統領告発受理への賛否を問う2日の採決で、なんとか告発を阻止した政府は、年金制度を含む社会保障制度改革(以下「年金改革」)成立に向けた動きを週明けに再開し、10月末までには上下両院の通過を目指す意向と、4日付現地紙が報じた。
3日に年金改革の期限を問われたエンリケ・メイレレス財相は、「理想的には10月いっぱいまで、しかし、11月までかかってもよい」との私見を示した。
大統領への告発受理に反対した下議は263人だった。年金改革は憲法改正にあたり、下院通過には、議員定数513人の60%以上にあたる308票が必要だ。
メイレレス財相は「告発に賛成した議員の全てが、年金改革に反対しているわけではない」と見ている。また、賛成票獲得のために改革の内容を緩やかなものにする可能性については、「5月の下院特別委で承認された年金改革意見書は、既に原案から25%も支出切り詰め幅を落としている。これ以上の譲歩は難しい」と答えた。
当面の方針は、下院の特別委員会で承認された意見書の内容を保ったまま承認を目指すというものだが、財相自身が以前、「年金改革は最重要項目を通す事が肝心」と語っており、改革内容の譲歩は濃厚だ。なお「最重要項目」とは、「最低需給開始年齢の設定」を指していると思われている。
昨年のテメル政権発足当時、連立与党の下議は416人おり、憲法改正を含む歳出上限案も通したものの、次なる課題の年金改革の意見書が特別委を通過した直後の5月17日にJBSショックが発生。ブラジル政界に激震が走り、4政党66下議が連立を離脱した。
それでも数の上では、連立与党は年金改革も可能な350下議を抱えているが、2日のテメル大統領告発阻止に投票したのは261人だった。政権発足当時と比較して、37%もの勢力縮小だ。
だが、民主社会党(PSDB)で告発に賛成した約半数の下議は、年金改革には賛成すると見られる。一方、与党内の複数政党からなる会派で、告発には反対した「セントロン」は、年金改革には反対しているなど、年金改革成立に向けた票読みは複雑だ。
議会としては、年金改革以前に選挙制度改革を含む政治改革に取り組む事を望んでいる。改革の内容には、公金を財源とし、選挙費用を補助する基金の設立などが含まれる予定で、来年の選挙で適用されるためには、10月のはじめまでに成立させる必要がある。
同改革は再選を目指す与党議員たちにとっても一大関心事で、特にセントロンの議員たちが成立を強く望んでいる。
政治改革を上下両院で成立させる期限は10月のはじめ。選挙制度改革と引き換えにセントロンを説得し、年金改革を行う目標は10月末。連邦検察庁がテメル告発の〃第二の矢〃を9月半ばまでに放つ事は濃厚。告発第1弾の受理阻止後も、テメル政権には厳しい戦いの日々が続きそうだ。