テメル大統領(民主運動党・PMDB)は8日朝、現行27・5%の所得税率のリストに月収2万レ以上の枠を新設し、30~35%の税を課す可能性を示唆したが、即座に与党議員も含む各所から反対の声があがって取りやめたと、9日付現地各紙が報じた。
だが、経済政策班は他の税金を上げる可能性を捨ててはいない。財務省は、法人税や配当税、不動産投資基金にかかる税の引き上げや、国外投資家への税の免除の廃止などを検討中だという。また、輸出企業や化学工業企業への財政優遇措置の廃止も検討されている。これにより、来年度会計には、355億レアルの増収が見込まれている。
テメル大統領は、所得税増税の可能性について問われると、所得増税も他の増税と共に検討の一部にはなっているが、まだ何も決まってはいないと答えたが、大統領府は同日の夜、「所得税増税の提案を議会に送ることはない。テメル大統領は今朝、経済政策一般を指して、可能性の一部を示唆しただけ。増税を避けるため、支出削減に焦点をあてている」と書面で発表した。
いったんは所得税引き上げを示唆しながら、その日のうちにトーンを引き下げた背景には、発表直後に企業関係筋、与党議員からの強い反発が出た事がある。
ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は、所得税引き上げが議会を通過する見込みはないと語り、上院政府リーダーのロメロ・ジュカー上議(PMDB)も、所得税引き上げには反対の立場を明確にした。
全国工業連盟会長のロブソン・ブラガ氏は、「政府は(所得税増税示唆という)誤ったシグナルを、不適切なタイミングで出してしまった」と語っている。
政府は8月末までに18年度予算案を提出しなくてはならず、増税の是非やその他の施策もその日までに決めなくてはならない。18年の財政目標は基礎的収支の赤字を1290億レアル以内に収めることだ。
国家予算は社会保障費と人件費ですでにひっ迫しており、政府が公共サービスの一部を停止しない限り、支出削減の余地はない。
景気回復のペースが期待を下回り、税収も伸び悩む中、テメル政権は赤字1390億レアル以内という今年の財政目標達成に苦労し、燃料関連の税を引き上げたばかりだ。
国内のメディアの中には、「今年の財政目標達成のための手段はほぼ尽きており、数日中に、1390億レアル以内の赤字という財政目標を、1580億レ以内の赤字へと引き上げるだろう」とする報道機関も出てきている。