「ブラジルを知る会」(清水裕美会長)が設立20周年を向かえ、記念企画として講演会『アマゾンの今』を開催した。講演したのはNPO法人「熱帯森林保護団体」(所在地=東京都)代表の南研子さん、フリーライターの下郷さとみさん。同会会員、非会員含め約50人が集まり、熱心に話を聞いた。
講演を前に清水会長はこの20年間を振り返り「3~4年で終わりかと思っていたので、こんなに続いて驚いている。節目を迎え、さらに頑張っていきたい」と会員らに感謝の言葉を贈った。
講演会で南さんはまず、同NPO法人団体設立の経緯を説明。ロック歌手スティングが行ったアマゾン環境保護を訴えるワールドツアーに同行した南さんは、アマゾンのカヤポ族リーダー、ラオーニさんと出会い、環境保護活動を決意した。
現在の人間関係の稀薄化についても言及し、インディオとの交流体験を通し、「私達が世界で失いかけている人の道を教えられることがある」と語った。
下郷さんは同団体でボランティアとして通訳、翻訳に携わり、2015年からプロジェクトコーディネーターとしても活躍している。アマゾンで撮った写真を見せながら住民の生活を紹介した。
萱葺きの背の高い家の中や円状の村の敷地の航空写真を見せながら、今回視察に入ったマチプ、カマユラ、ヤワラピチ族の村の作りや生活について説明。インディオは村の近くで焼畑農業をするのが伝統的な生活方式だった。ところが近年は自然保護区近くが開発しつくされ、アマゾンの湿度が落ちたせいで、それが原因で森林火災が起きることがあるという。
「地面の落ち葉が乾燥してパリパリになるほど。一昨年からカヤポ、ジュルナ族の青少年による消火団体プロジェクトを作り、支援している」と活動を紹介した。
マチプ族の村では「養蜂プロジェクト」を行っている。採れた蜂蜜を売った資金で井戸や太陽光パネルを設置した。その電力でパソコンを動かし、村人もその使い方を覚えて、養蜂専門家とのプロジェクトを進めている。正規に販売するため、法人許可取得に向け動いているそう。
下郷さんは「先住民が自立して活動できるように、また子ども達の未来が希望に満ちたものであるように支援を続けていきたい」と語り、発表を終えた。
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下郷さんによると、消火団体プロジェクトには機材の保管庫や、色んな村から集まった消防団員の宿泊施設を建てるため、日本からの支援として資材のみ輸入した。今まさに建築中だそう。下郷さんは「自立した活動ができるように、雨季の間は森で集めた木の苗で苗床を作り、それを他の森林再生プロジェクトに売って消火団体プロジェクトをまわしていこうという若者もいて、本当に頼もしい」と語った。参加しているのは18~20歳の若者だそう。
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シングー国立公園南端の境界線は全部大豆畑にされ、乾季は「見渡す限りの荒涼とした砂漠のよう」だという。インディオの長老達によると2010年代から気候が変わり、雨が降らなくなった。振るときは変な季節に大量に降り、雨季の降水量も減ったそう。森の中の湿度が落ちたせいもあり、風の強い日は村の中が砂漠のような状態になるとか。昨年は特に森林火災が大発生し、村のすぐ近くまで及ぶことも。下郷さんは「自然保護区であるシングー国立公園の18%が1カ月で燃えつくされた」と語ると会場から驚きの声が上がった。「乾燥した熱帯雨林」という状況には大変な違和感が漂う?!