《ブラジル》財政目標見直し=赤字限度額を引き上げる=今年と来年は1590億レアルに=それでも足りない財政努力=議会との交渉は厳しいものに
【既報関連】ブラジル政府の経済政策チームは15日、今年と今後3年(2020年まで)の財政目標として定められていた、政府の基礎的財政収支の許容赤字幅を引き上げた(2020年は100億レアル以上の黒字から、650億レアル以内の赤字に変更)と16日付現地各紙が報じた。
政府は、基礎的財政収支の黒字転換の時期を、2021年からに変更した。変更前の今年の目標は赤字額1390億レアル以内で、来年はそれが赤字額1290億レアル以内だったが、今年も来年も、赤字上限が1590億レアルに変更になった。
19年の目標は赤字上限650億レだったが、赤字1390億レ以内に変更された。政府の財政収支が最後に黒字を計上したのは2013年のことだ。(752億9千万レアルの黒字)
テメル政権が発足した当初の18年度財政目標は、「790億レアル以内の赤字」だったが、それは2倍以上に膨れ上がった。
財政目標の見直しを受けて、米国の格付け会社S&Pは15日、ブラジル国債の格付けをBBに保ちつつ、「否定的観測」の注釈を取り消した。
雇用や生産など、ブラジル経済に好意的な指標が出始めている事と、景気の力強い回復はまだ遠く、財政バランスを保つのに苦労している事を総合的に判断したものだ。
エンリケ・メイレレス財相は「インフレ抑制は経済活動活性化のためには良い事だが、国にとっては税収額が目減りする要因でもある」と説明。財政目標の見直しは、税収を含む歳入が予想を下回ったことが主な原因とし、税収が予想を下回った原因の一つにインフレ抑制をあげた。
同財相は、赤字許容額の拡大となった財政目標見直しは、抑えきれない支出をカバーする必要ありきで決められたわけではないが、これで基本的な行政サービスの停止は避けられるとした。
ただ、現状では、赤字上限を1590億レアルに拡大してもまだ140億レアル足りない見込みで、政府は、滞納税回収計画(Refis)の承認と、プレ・サル油田や水力発電所の入札による収入などを頼りにしている。
ジオゴ・オリヴェイラ企画相は、支出減、収入増のための特別な努力を行わなければ、来年の赤字は1735億レアルになってしまうことを政府は認識しているとした。
政府は、非公開投資ファンドへの課税や、国家公務員の社会保障負担増など、変更後の財政目標を達成するため、更なる努力を継続しなくてはならない。
だが、それらの実施のためには議会の承認が必要だ。財政目標の他、社会保障制度や選挙制度の改革など、与党内でも利害の背反する課題を抱える中、議会内勢力との交渉は難航が予想される。
なお、赤字拡大には社会保障制度改革の承認の遅れも影響しており、承認が遅れれば、さらなる赤字額拡大もあり得る。来年度の最賃は979レアルの予定だったが、969レアルに引き下げられる見込みだ。