青年隊の中には、妻帯し、5~6名の子の父として、円満な家庭と経済的基盤を築き、子弟の教育は勿論、県人コロニアの範たる中堅指導者として多くの成功者と肩を並べて手広く商売を営む者、また模範的篤農青年としての農業経営者、あるいは工業経営者としている者が輩出している。
いまやあらゆる方面に於いて青年隊は、それぞれの個性に沿って、種々の職業分野で進歩的開拓者となっており、無限の可能性を秘めるブラジル大陸に、着実な歩みをみせ、堅実に実を結び始めていた。
在伯沖縄産業開発青年隊の代表派遣
かくして1970年7月の青年隊総会は、これまでを一区切りとして、青年隊員個々のブラジルに於ける活動状況と14年間の歩み、実態調査の結果を携え郷里の関係機関へ報告し、更に今後、種々の問題について連絡協議など下記の目的により、勇躍青年隊代表を派遣すべく決議したのである。
その目的とは、
1.青年隊員個々在伯14年の経過報告について青年隊員個々の実態をつぶさに調査し、琉球政府関係機関並びに沖縄産業開発青年協会に報告し、参考に資すると共に、ブラジルに於ける青年隊員個々の将来にも資したい。
2.青年隊の渡航費免除に対する謝意と、その返済解消事務について協議連絡。
3.留守家族の慰問
近年、日本の経済成長と工業発展のため、労働力不足で、ブラジルから逆移住の憂目にあい、ブラジル事情が悪評されている。そのため留守家族の中に不安感が生じている。その解明。
4.花嫁移住の問題について
独身青年隊の目下の問題として、沖縄ブラジル協会の花嫁相談部が創設されたので、その構想と現状把握。
5.その他
協会本部から青年隊代表の派遣についての打診(相互交流)
しかしながら、今回は、第一回目の代表派遣である上に、実態調査を一層綿密にするため、時間的、経済的困難が予想される。それと共に、琉球政府や青年隊本部から派遣費は、全く援助がなく、総て我々現地青年隊の負担という苦しみがある。そこで、隊員が一致協力、資金造成のため、応分の負担と実態調査の実施協力のため、会員各位への積極的協力が要請された。
在伯沖縄青年協会の創立と在伯沖縄産業開発青年隊代表の派遣
ブラジルと云えば、アマゾン河、広大な大地にコーヒーの農産物が存在する国をイメージするのがせいぜい日本人の常識ではないか?日本の約23倍と云われるこの大陸に移住して10年余、はるばる沖縄から移り住んだ移民青年隊は、一体どうなっているのだろうか、いささかなりともその実情をつまびらかにしたい思いで1人1人の実態を調査することにした。
その実態調査表を前記の通りに作成した。いかなる組織団体も経済的裏付けがなければその活動範囲は、自ら制約され、所期の目的を達する事は不可能である。
特に、今度の我々の代表派遣問題は、その以前に行う実態調査において多額の費用を必要とし、代表の往復飛行運賃を含めると、青年隊員の寄付、募金だけで資金捻出を果たして実現できるのか、と非常に懸念せざるを得なかった。