ブラジル静岡県人会(原永門会長)創立60周年式典が8月27日午前11時、同会館で開催された。母県からは川勝平太県知事、杉山盛雄県議会議長らが出席。集まった250人を超える県人会関係者と共に節目を祝った。来賓らは祝辞のなかで先人たちの功績に触れ、その苦労を偲んだ。式典後には祝賀会、歌や踊りが披露され祝福ムードに華を添えた。
同県人会ゆかりの人々が会館に三々五々集まり、式典開始30分前には満席となった。追加の椅子が用意されたが、それでも立ち見の人が出て、過去最高の250人以上が集まった。
式典はサンパウロ州軍警楽団による演奏で華々しく開幕した。開会の挨拶に立った川崎エレナ副会長は、「準備は大変でしたが、60年前に創立した方々の苦労を励みに最後までやり通すことができた」と先人たちへの感謝を述べ、楽団の演奏による日伯両国歌斉唱、先没者への黙祷が捧げられた。
原会長は「今日の式典には県費留学制度を利用し静岡で学んだ方々が出席している。彼らは日本の価値観、倫理観を身につけ、現在ブラジルの社会で活躍している」と廃止となった同制度の重要性に触れ、「静岡で学ぶ若者が増えることでブラジルにおいても日本人の価値観が末永く守り続けられます」とし、川勝知事らに制度の再開を求めた。
山本茂県人会副評議議長は「今日を迎えることができて感激。この立派な会館は県から相当な援助を得て建てたもの。レンガの一つ一つに県と会員の心がこもっている。今後も県人会が発展を続けることを祈ります」と挨拶し、会場からは大きな拍手が起きた。
川勝知事は「静岡県にいる2万5千人のブラジル人と370万人の静岡県人を代表して心からお祝いします」と挨拶し、「これまで苦労なさった(同県出身の)平野運平を初めとする全ての先人に心からお祈りした」と話したところで感極まり、声を震わせた。原会長から要望のあった県費留学制度については「静岡県は若い子弟を心から歓迎する。技術研修生の受入れ枠を拡大して会長の期待に応えたい」と話した。
杉山県議会議長は「ブラジルと日本の双方を知る皆様は両国関係の一層の増進に大変重要な存在」と強調した。
ブラジル外務省のペドロ・ヤクビアン氏、関口ひとみ在聖総領事代理、西本エリオサンパウロ州議会議長代理、野村アウレリオサンパウロ市市長代理、呉屋春美文協会長、谷口ジョゼ県連会長代理が、祝いの言葉を添えた。
県費留学生・技術研修生代表として祝辞を述べた栢野エルザさんは32年前に浜松で1年間研修を受けた。「日本の四季の美しさは言葉では言い尽くせない。自分の祖父母が生きた場所を知ることができた」との体験に触れ、「こういった制度で多くの子弟が日本に渡る機会があるとありがたい」と結んだ。
「今までで一番盛大な会」=静岡新聞社からも祝辞
静岡新聞社が撮影した富士山写真が提携紙であるニッケイ新聞からパネルとして提供され、会場に23枚が展示された。静岡新聞社・静岡放送の大石剛社長からの祝電も読み上げられ、「掛川市にはイッペーの木が植樹されており、黄色い花が見ごろを迎えた。可憐に咲き誇る姿を見た人々は日本移民の苦労に思いを馳せたでしょう」と、日本とブラジルの繋がりを紹介した。
サンパウロ市議会から川勝知事、杉山県議会議長へ、静岡県からの高齢者と優良海外移住者への表彰それぞれが行なわれた。静岡県人会は会員を表彰し、川勝知事、杉山県議会議長、日系3団体へ記念品などを贈呈した。
式典後には盛大な祝賀会が行なわれ、乾杯に続くケーキカットで祝福。ステージでは太鼓演奏、サンバ、カポエイラショーの他、初披露となった「ブラジル日系人賛歌」が会場を盛り立てた。
会活動に20年以上関わってきた平野パウロさん(75、2世)は、「たくさんの人が集まって、今までで一番盛大な会になった」と笑顔を見せ、「70年、80年と続けるためにもっと若い人がたくさん集まるような県人会になってほしい」と将来に向けての希望を述べた。
静岡県でハンバーガーショップを経営する池ノ上ネルソン(65、二世)さんはこの日の式典のために駆けつけた。「自分が日本で頑張れるのも先輩方がブラジルで信頼を得て、生活の基礎を築いたから。改めて感謝の気持ちがこみ上げてきた」と感慨深げに話した。
「若い世代を通してより深い交流を」=静岡県知事 川勝 平太
本日ブラジル静岡県人会60周年式典をここに迎えられますことを、静岡県にいる2万5千人のブラジル人と370万人の静岡県人を代表して心からお祝いを申し上げます。本当におめでとうございます。
この素晴らしい式典へ多くの来賓にご臨席いただいて、共にお祝いできることを誠にうれしく思います。
静岡県民が笠戸丸でブラジルに着いたのは1908年のことでした。それ以後、様々な労苦を汗に流し、後輩のために、自らの子孫のために、母国の誇りのために一生懸命ブラジルの国づくりに尽くしてこられた同胞に心から敬意を表すものでございます。
式典の前にイビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑に参拝することができました。慰霊碑は満開のイッぺー、桜、そして静岡県花のツツジに囲まれておりました。これまで苦労してこられた平野運平(同県出身)を始め、すべての先人に心からお祈りさせていただきました。
さて、昨年はブラジルでオリンピックが開催され、静岡出身選手たちがメダルを取りました。400mリレーで飯塚翔太選手、卓球水谷隼選手、伊藤美誠選手、さらにパラリンピックで活躍した陸上競技の山本篤選手も静岡県出身です。
彼らは静岡の力を見せようと一生懸命頑張って我々に感動と励ましを与えてくれました。2020年には東京オリンピックパラリンピックが開催されますが、自転車競技は静岡県で行われます。そこでも皆様の同胞が活躍を見せてくれることでしょう。
原会長がおっしゃったように、若い人に県人会が継承されなければいけません。静岡県は若いご子弟を心から歓迎します。現在、技術研修生として受け入れていますが、出来れば受け入れ枠を拡大して会長の期待に応えたいと存じます。
若い世代を県に送っていただき、静岡県と県人会の絆を深めることを通して、日本とブラジルの友好と愛情を築き、先人のご苦労に報いたいと存じます。
本日は本当におめでとうございました。改めて370万人を代表して、心からから敬意とともに御礼申し上げます。
「県費留学再開の重要性」=ブラジル静岡県人会会長 原 永門
静岡県人会の創立60周年式典にあたり、川勝平太知事、杉山盛雄県議会議長を始めとする多くの来賓の方に参加いただき、心から感謝いたします。静岡県人会は60年にわたって母県と交流を深め、友好な関係を維持してきました。
県人会は現在、世代交代の段階にあり、静岡県移民の子孫である若い世代を様々な行事を通して育成しています。近い将来、彼らが日系社会のリーダとして活躍し、ブラジル社会に貢献していくことを願います。
昨今は県費留学再開の重要性が高まっています。若者たちは制度を利用して母県に訪れ、静岡の文化や習慣により親密になり、学ぶ意欲を身に付けました。当時の県費留学生が本日の式典にも出席しています。中には現在県人会の役員になっている人もいます。
日本で研修や留学の機会を与えられた方々の多くは日本の価値観、倫理観が身につき、ブラジルの社会でも活躍しています。そしてブラジルの発展に貢献し、大いに信頼されています。
ご来伯の来賓の方々に県費留学制度の再開をお願い申し上げます。静岡で学ぶ若者が増えることによって、ブラジルにおいても日本人の価値観が末永く守り続けられ、将来、大きな実を結ぶでしょう。
ブラジル日本都道府県人会連合会には47都道府県が集い、毎年サンパウロで開催される日本祭りには約16万が来場します。そのうちかなりの方々が非日系です。日本の商品や文化が高い評価を受けていること、この国で多文化共生が根付いていることの証です。
最後になりますが、当県人会の運営に専念されてこられました歴代の役員の皆様方に熱く御礼申し上げます。並びに会員の皆様には平素よりご協力いただき感謝申し上げます。準備してくださった実行委員の皆様にも感謝申し上げます。