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コロニア・ピニャール=「びわ祭り」に最多来場者=村民団結で工夫を凝らす=年々盛り上がって5回目

開会式の様子

開会式の様子

 ブラジルで生産されるびわの50%近くを占め、「びわの里」として知られるサンパウロ州サンミゲル・アルカンジョ市で、コロニア・ピニャール文化体育協会(貴田孝平会長)が主催する『第5回びわ祭り』が2、3の両日、同会館施設で開催された。会員家族およそ200人が汗を拭い総出で準備にあたった同祭は、2日間とも晴天に恵まれ、過去最多となるおよそ2千人が来場し、旬を迎えるびわを堪能した。

見事な演奏を披露した飛翔太鼓

見事な演奏を披露した飛翔太鼓

 2日午後6時から開始された式典で、貴田会長は「会員の皆様、村民の皆様による協力のお陰で、第5回目びわ祭りを開催できた」と謝意を滲ませ、「多くの住民や村民の方に来て頂き、一日を楽しく過ごしてほしい。今後も、びわ祭りが村の行事として大きく育ってくれれば」と期待を込めた。
 式典では、金兼文好祭典委員長のほか、パウロ・ヒカルド・ダ・シウバ同市市長、エジソン・ジリボニサンパウロ州議、森エリオ援協理事らが出席し、祝辞が寄せられた。
 二日間の開催期間中、地元生産された果実が販売されたほか、日本食の出店が立ち並び、主要舞台では様々な演目が披露され、会場を沸かした。
 なかでも一番の目玉となったのが、地元産びわやデコポン、アテモイアの販売。2日間で併せて3千箱が販売され、デコポンのジャムなど趣向を凝らした高品質な加工品も盛況を博していた。
 また出店では、ラーメン、たこ焼き、手巻き、餃子、焼き蕎麦など人気の日本食に列を成した。来場客の8割以上が近隣に住んでいるブラジル人と見られ、日本食も呼び込み役となり、地域に根ざした祭りとして定着しつつあるよう。

三千箱が完売となった地元産果実

三千箱が完売となった地元産果実

 そのほか、二日目には近隣の農場をトラクターで巡る観光ツアーが人気を博したほか、主要舞台では歌謡ショーやよさこいソーラン、地元の和太鼓チーム「飛翔太鼓」等による種々の演目で会場を魅了していた。
 同祭を終え、貴田会長は「『一年に一度村民が一丸となって協力してやるのもいいのでは』と始まった。当初は、暗中模索だったが、委員会を毎年立上げ、やる内容も板に付いてきた」と振り返り、「無事に終えることが出来たのも、皆さんの協力あってこそ」と感謝を滲ませた。
 「回を重ねるごとに来場者も増えてきた。今年は過去最多だった」と喜びを見せ、「祭りの趣旨を見失わず、今後も村一丸となってやっていきたい」と意気込んだ。

 

村おこしで始まったびわ祭り=200人が総出で準備

会場の様子

会場の様子

 高品質の種無しマスカット等のぶどう栽培で知られ、50世帯ほどの果樹生産者を抱える同地。ところが近年は為替相場の影響を受け、輸入肥料の仕入価格が高騰し、手間賃が嵩むなどで生産価格が高騰した。また、全伯的にぶどうが栽培されるようになり、生産過剰による販売価格下落が起き、10年ほど前からぶどう栽培が下火傾向になっていた。
 そんななか、生産者が多角経営を目指し、ここ20年で生産を伸ばしてきたのがびわだった。びわは高温地帯では育ちにくいという特性があり、全伯的に競合は少ない。それほど手間が掛かからないこともあり、主要作物の一つに成長した。

人気を博した農場ツアー

人気を博した農場ツアー

 そうした背景を受けて、2012年の入植50周年のとき、若者を中心に「村を活性化させるため、村民一丸となって何かできないか」との声が高まり、〃村おこし〃としてこの「びわ祭り」が始められた。コロニア・ピニャールは市街地から少し離れた山間部の盆地のような立地。福井県の3家族14人が第一陣として入植したことから始まったため、「福井村」とも呼ばれる。
 5月から10月までの出荷期間のうち、びわのもっとも旬な時期として、毎年9月頃に開催される。外部団体に頼らず、会員家族およそ200人が一丸となって準備にあたり、今年で5年目を迎えた。

 

飛翔太鼓の熱演で沸く会場=前代未聞の全伯優勝3度

超満員の会場を沸かせた飛翔太鼓

超満員の会場を沸かせた飛翔太鼓

 びわと並び、祭りのもう一つの目玉として注目を呼んだのが、地元和太鼓チーム『飛翔太鼓』だ。7月30日に行われた全伯太鼓大会で、三度目の優勝という前代未聞の快挙を成し遂げ、来年3月に石川県で行われる全国大会への切符を勝ち取った。言わば「ブラジル代表」、地元の〃期待の星〃だ。
 開会式後、夜が更けるなか、祭りの幕開けを飾った『飛翔太鼓』の一糸乱れぬ圧巻の熱演に、万雷の拍手が巻き起こり、会場は熱気で包まれた。
 貴田会長は、「かつてと比べると、驚くほどに上達した。第一回びわ祭りを開催した年に、『飛翔太鼓』は、全伯大会で初優勝を飾った。びわ祭りとの相乗効果で、さらに村が活気づいてきている」と目を細めた。
 『飛翔太鼓』のメンバーは、なんとコロニア・ピニャール日本語モデル校の全生徒。JICAシニアボランティアで派遣された太鼓指導員の蓑輪敏泰さんの指導をきちんと日語で理解し、コツコツと努力を重ねてきたという。
 貴田会長も、「日語学校の生徒も漸減してゆくなかで、メンバーはたった10数人。一人でも欠けていたらできなかった。本当に驚くべきこと」と語り、「子供たちのみならず、その父兄や、村民や会員らの理解と協力もあってこそ」と強さの秘訣を語った。
 同地文協は、来年の全国大会出場のため、子供達の遠征費およそ8万から10万レアルを捻出するための募金活動を行ってゆくといい、祭りの一部収益が充てられるほか、協力券「リッファ」の販売などを行っていくという。
 西川修治元会長は、「50世帯ほどの小さい部落だが、みな総出で村おこしに精を出している。そんな団結力が影響しているからこそ、太鼓も優勝できる土壌があるんじゃないか」と語り、同村の紐帯の強さを伺わせた。

 

【役員名簿】
会長・貴田孝平
第一副会長・北原マキ
第二副会長・山下高広
会計・広瀬清
農事・藤沢正光
土木・有我幸二
体育・深沢正一
学務・樋口憲治
文化・山村幸行