オペラ歌手の田中公道さん(80、島根)が先月17日から恒例のブラジルツアーのため、妻の宏子さんと共に来伯している。
20回目となる今回は、来年1月まで滞在する予定で、その間30回以上のコンサートに出演するほか、コンテストの審査員も務める。既に南米での出演数は300回以上を数えるという。
田中さんがオペラ歌手を志すようになったのは高校3年生の時。結核にかかり就職先が決まっていたが辞退し、6ヵ月間の休養生活に入った。その時、ラジオで聞いたイタリアのオペラ歌手の高音に魅了されたという。
高齢になるほどに高い声は出しにくくなるが、田中さんは高音に強いこだわりを持ち、テノール一本で歌い続ける。「20代の心肺機能を100%とすると、70代では60%と言われる。年と共に衰えるが、自分の年齢に合わせ声の出し方を修正し、高音を保っている」と話す。
オペラ「カメルン」でカルメンの相手役ドン・ホセを演じた際もテノールで歌い上げた。その時のカルメンとドン・ホセはなんと52歳の年齢差。「若い女性に引けを取らない演技ができました」と笑う。
10月14日には熟連会館で開催の「抒情歌を楽しむ会」で無料のコンサートを行なう。「今年は80歳で大きな節目。自分に合わせた声の出し方を熟知している今こそが最高とも思う。80歳の自分の声をぜひ聞いて欲しいと思います」と語った。