【既報関連】現在ブラジル経済は若干の回復基調を示してはいるが、来年は大統領選が行われることで、市場の動向は先行き不透明だ。
この状況下、ブラジルの企業は、低金利で返済期間の長い債権を発行して資金を得、返済期限の近い高金利の負債を早めに返済していると、3日付現地紙が報じた。
今年に入ってから8月までに行った債権発行により、各企業は699億レアルの資金を手に入れた。この額は昨年同期より3割以上大きい。同現象は国外市場にも及んでおり、各企業は国外向け債権の発行によって、今年9月末までに210億ドルを得た。これは昨年同期比で1割大きい。
国内主要銀行の幹部たちは、各社の債権発行額は年内に300億ドルに達すると予測している。
この結果、17、18年に支払い期限を迎える負債の総額は、1月以来65%も減少した。言い換えれば、各企業は支払期限の近い負債を積極的に清算し、低金利の長期返済に切り替えている。
過去1年間の劇的な政策金利下降、ブラジル経済に対する好意的な見方が戻りつつあること、大統領選という、市場に不確実性をもたらすイベントが来年に迫っていることなどが、「高利の借金を低利な借金に借り換える」という戦略を各企業が採用する要因となっている。
この傾向は企業の産業分野や規模を問わない。
石油公社のペトロブラス社は2日に、18、19年に期限が切れる負債の返済前倒しと、総額63億ドルに上る借り入れを発表した。新たな負債の返済期限は2023年までとなった。
ブラジル金融資本市場協会(Anbima)のデータによると、この傾向は下半期に入ってからより顕著になっている。ブラジル企業が債権発行によって得た総額は、7、8月だけで359億レアルに達しており、上半期の総額を上回る。
ブラジル銀行のアギナウド・バルビエリ氏は、「ブラジル経済への信頼感は過去3年間見られなかったほど高まり、リスクを負うことへの抵抗感が弱まっている」と語った。
これまでは国債などを買い求めていた投資ファンドは、政策金利低下により、より収益性の高い投資先を探している。それらの資金が、「借り替え需要」の高まりをもたらしている。
各企業をこの借り替えに走らせている大きな要因としては、金融市場の動き以外に、来年の大統領選が挙げられる。
産業開発研究院(Iedi)の主席エコノミスト、ラファエル・カニン氏は、「来年の大統領選挙の行方も、その後の経済政策も全く読めない。そんな中、各企業は手を尽くして、支払い義務の削減を図っている」と語った。