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《ブラジル》ルッチ・エスコバル死去=軍政とも戦った大物演劇女優

 ブラジル演劇界の大御所女優、ルッチ・エスコバルが5日、入院中のサンパウロ市の病院で亡くなった。82歳だった。6日付現地紙が報じている。
 1935年にポルトガルのポルトで生まれたルッチは、16歳のときブラジルに移住。そこで劇作家のカルロス・エンリケ・エスコバル氏と結婚し、50年代末にフランスで演劇を学んだ。
 60年にブラジルに戻り、劇団「ノーヴォ・テアトロ」を主宰。ブラジルは64年から軍事政権に入ったが、反軍政主義者のルッチは軍政の検閲とのせめぎあいの中で、ドイツの劇作家ブレヒトの「三文オペラ」や、シコ・ブアルキの戯曲「ローダ・ヴィヴァ」などを演じた。後者の上演中には軍の共産主義者摘発部隊(CCC)から侵入を受け、逮捕もされた。
 だが、フッチはそれに屈せず活動を続け、1974年にはサンパウロ市で国際演劇祭を主催するなど、当時の演劇界でリーダーシップを発揮。自身でも「バベルの塔」などの代表作に出演した。
 80年代には演劇の活動を休止し、政界に進出。83年と87年にはサンパウロ州議員選で当選し、州議を2期つとめた。
 議員退任後は演劇に戻ったが、2000年代初頭にアルツハイマー症を発症。その後もしばらくは演技を続けたが、一線からは遠ざかっていた。