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ブラジル社会に不安な〃病〃広がる=治安不安が救世主志向へ=民主主義への信頼も低下

ボルソナロ下議(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)

ボルソナロ下議(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)

 ブラジル保安フォーラム(FBSP)は6日、「国内の暴力に対する恐れと独裁主義」と題する調査結果を発表した。それによると、国民の多くは治安の悪さに辟易しており、強硬な治安対策と志向が重なる独裁主義に共感する傾向にある事が分かったと6日付現地紙が報じた。
 FBSPの依頼で調査機関ダッタフォーリャが行った調査によると、「独裁主義への共感度」を0から10で測った指数は8・1だった。大統領選を来年に控え、この傾向はより顕著になっている。現在は政治的にも社会的にも不安定なため、強権的な指導者によって治安が安定するならポピュリズムや独裁主義を支持するという人が多かったのだ。
 レナト・セルジオ・デ・リマFBSP会長は「我々は、強権統治が平和な社会をもたらすと吹聴する人々から圧力を受けている。『荒れ果てた地』に住んでいると考える人々は、いっそ『救世主』に頼ろうと考えてしまうのだろう」とした。
 この風を受け、来年の大統領選で支持を高めている政治家に、ジャイール・ボルソナロ下議(キリスト社会党・PSC)がいる。9月に行われたダッタフォーリャ調査では、いかなる候補者との組み合わせでも、同下議は15~19%の支持を集めた。
 調査は「権力への服従性」「権威主義的志向」「慣例尊重主義的志向」の分野別に行われた。
 「独裁主義への共感度」を構成する要素中、権力者や強いリーダーシップへの信頼を示す「権力への服従性」は、右派、左派ともに、高い指数を記録した。
 同調査の結果を年齢や学歴、収入、人種などで分けてみると、「独裁主義への共感度」が高かったのは、学歴が低い層、収入が低い層、24歳以下または45歳以上の層、混血、人口の少ない自治体に住む層、北東部在住者などだった。
 年齢別の分析結果の中では、16~24歳の層が(45歳以上の層より若干低かったものの)、25~34歳、35~44歳の層より独裁主義に共感しているとの結果が出て、調査を行った関係者らを驚かせた。
 同調査では、「暴力への恐れ」も調査された。様々な種類の暴力の全てに遭う可能性があると恐れていえば1、いかなる種類の暴力にも遭わないと考えていれば0と評価した場合の指数は0・68で、暴力への恐れが強い事を示している。
 ブラジルでは、一般国民の、警察や司法、政府、議会への信頼度が低く、治安への恐れと重なって、「いっそ強権的な指導者へ」といった救世主思想に流れ易い下地も存在する。
 「民主主義は国の統治に最良の方法だと思う」と答えた人は56%で、2014年12月の66%を大幅に下回った。