ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》自動車産業=ベンツなど、各社が続々と投資計画発表=向こう5年で150億レアル規模=雇用が促進されるかは疑問

《ブラジル》自動車産業=ベンツなど、各社が続々と投資計画発表=向こう5年で150億レアル規模=雇用が促進されるかは疑問

15年にメルセデス・ベンツ社が新工場建設計画を発表した時のジェラウド・アウキミン、サンパウロ州知事(Edson Lopes Jr./A2AD)

15年にメルセデス・ベンツ社が新工場建設計画を発表した時のジェラウド・アウキミン、サンパウロ州知事(Edson Lopes Jr./A2AD)

 メルセデス・ベンツ社は9日、ブラジル国内のトラックやバスの生産工場に24億レアル規模の投資を行うことを発表したと、10日付現地各紙が報じた。
 ブラジルでは今年の3月以降、メルセデス・ベンツ社を含む自動車会社8社がブラジル国内への投資を発表しており、2022年までに投入される額は150億レアル近くにもなる。
 ブラジルでは不況のため、13年から16年にかけて、乗用車や小型商業車、トラック、バスなどの総生産台数が42%減少しており、その間に3万5千人分の雇用も失われた。
 各社の投資計画発表は、長期化した不況に苦しんでいた業界に活気が戻りつつあることの証明だ。
 16年の自動車生産台数は、13年の370万台より150万台減の220万台まで落ち込んだ。今年も、最も楽観的な予想でも270万台だ。
 メルセデス・ベンツ社の場合は、18年から22年にかけて、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市と、ミナス州ジュイス・デ・フォーラ市の工場を近代化する意向だ。
 メルセデス・ベンツ社ブラジル法人社長のフィリップ・シェメル氏は、「政府は適切な政策をとっている。これが続けば我々には好機」と語る。農・鉱業部門でトラック需要が高まってきていることもあり、今後の進展に強気の姿勢だ。
 また、フォルクス・ワーゲン、ブラジル法人の新社長に就任した、アルゼンチン人のパブロ・ディ・スィ氏も、「政策転換により、経済は回復しつつある」としている。同社長は、フォルクス・ワーゲン社は今後4年で自動車販売台数を4割回復させることができると予想している。
 16年のブラジルの内需は200万台で、12年の380万台と比べて180万台も落ち込んだ。今年の予想も220万台に過ぎない。
 しかし、05年に72万4千台を記録して以降は減少が続き、14年には33万4千台まで落ち込んだ国外向け自動車販売台数(外需)は、今年は過去最高の74万5千台を記録すると予想されている。
 ブラジルで生産している会社の中、輸出車トップのフォルクス・ワーゲン社社長ディ・スィ氏は、「競争力を高めて、トルコ、エジプト、チリなどにも販売を拡大しなくては」と語る。
 各社の投資は新工場の設立ではなく、既存設備の近代化で、効率化の名のもとに雇用を減らしかねない動きでもある。メルセデス・ベンツ社のシェメル氏は「効率化はするが、需要も上がるから、人員整理にはならない」としている。
 13年の自動車部門の雇用は15万6900人だったが、16年は12万1200人まで落ち込んだ。最近調査では12万6300人と、若干の回復にとどまっている。
 フォルクス・ワーゲン社トラック、バス部門は9日、6年ぶりにリオ州レゼンデ市の工場職員の集団休暇を解除した。同社はその理由を、需要の回復と、家族向け新車種の投入によるものと説明している。