テメル大統領に対する2度目の告発は、25日に開催される下院本会議で最高裁での審理継続拒否となる可能性が高まっているが、それと引き換えに、連邦政府の政策で犠牲になった部分が出てきていると20日付現地紙が報じている。
18日の下院憲政委員会(CCJ)で審理継続を拒否することが承認された時点で、25日に行われる予定の下院本会議での投票でも「告発受付拒否」との判断になるだろうとの見方が、ロドリゴ・マイア下院議長ならびにその周辺に広がっているという。
だが、連立与党の政府リーダーたちは、連邦政府がこの本会議後に審議することを望んでいる、社会保障制度改革その他の財政改革法案の審議を回避したがっているという。
それは、社会保障制度改革が一般国民からは「苦い薬」とも称される不人気な政策であり、選挙を1年後に控えた状況でこれらの政策を承認してしまうと、各政党の得票に影響が及んでしまうのではないかとの懸念があるためだ。こうした主旨の発言を、社会民主党(PSD)下院リーダーのマルコス・モンテス下議も認めている。
こうした状況に、「社会保障制度改革を通したいのは、不人気なことを押し付けたいからではなく、国が経済不振から脱するために不可欠な緊急案件だからなのに」と、民主運動党(PMDB)の下院リーダー、バレイア・ロッシ下議は語っている。
それと引き換えに、共和党(PR)の下院リーダー、ジョゼ・ロシャ下議が提唱するような、治安関連の法案など、国民の関心が高い法案を通過させようとする意向が議会の中で強いという。
他方、フォーリャ紙によると、テメル大統領はPR元党首のヴァウデマール・コスタ・ネット元下議に対し、自身への告発の審理継続に反対してくれれば、政府が予定していたサンパウロ市のコンゴーニャス空港民営化を断念すると約束したという。
ヴァウデマール氏はメンサロン事件で収賄容疑で実刑判決を受けて服役後、2015年に刑減免を受けた。現在は党首ではないが、党内では強い影響を持ち続けており、連立与党としてのPRの忠誠確保には不可欠な人物だ。
コンゴーニャス空港は国内で最も収益率が高い空港で、運輸省ならびに同省直轄の航空公社(インフラエロ)のような運輸・交通部門の要職者が多いPRには、手放したくない機関の一つだ。
同空港民営化は、財政健全化を最優先する財務省のたっての願いで、運輸省とインフラエロが渋々、民営化対象者リスト掲載を認めたものだ。だが、テメル氏の告発拒否にPRの協力を仰ぐ必要が生じ、大統領としては背に腹が変えられなくなったようだ。