ブラジルでは今、先頃販売をはじめた「黒いトイレットペーパー」の存在が話題を呼んでいる。
これはトイレットペーパー大手「ペルソナル」社が開発したもので、イメージ・キャラクターに、ブラジル国内では多数のファッション誌や女性誌の表紙を飾る若手屈指の人気女優のマリーナ・ルイ・バルボーザを起用する熱の入れようだ。
広告ではマリーナが、黒のトイレットペーパーを身体に巻きつけ、まるで一流のデザイナーが作ったレッドカーペット用のドレスのように見せる演出もなされている。
この宣伝にも象徴されるように、今回のこの黒トイレットペーパーで象徴したかったのは「高級路線」だ。ペルソナル社がマスコミ向けに出した声明では、「黒は贅沢品を象徴し、ファッションの世界では〃洗練〃を意味する」としており、黒という色を導入することによって、トイレットペーパーの世界に新鮮なイメージをもたらしたかったようだ。
もっとも、トイレットペーパーとは汚物を拭くものであり、そうしたものに洗練されたイメージが果たして必要なのか。あるいは、拭き取った汚物がはっきりと見えた方がいいわけだから、従来の白い方が見やすくていいのではないか。そういう疑問は挙がって極めて自然だと想われる。
だが、ブラジルでは、そうした議論の先に、別の問題が浮上している。それはこの商品が売り出しの際に使ったキャッチ・フレーズだ。
その言葉とは「ブラック・イズ・ビューティフル」。ペルソナル側は、黒を単に「美しい色」として売り出したかったようだが、黒人側はそうはいかなかった。
それは、「ブラック・イズ・ビューティフル」という言葉が、アメリカでは黒人たちが法的人種的平等を求めて戦った公民権運動の際、あるいはその施行後に黒人のさらなる地位向上を求めた際に使われた荘厳な言葉であるためだ。
作家のアンデルソン・フランサ氏は「ブラック・イズ・ビューティフル」という言葉を分析し、「その言葉を掲げた人の中には、血を流し、亡くなった人もいる。この言葉はかつてないほど、大切な意味を持っている」と語っている。そんな中、「こうした意味合いのある尊い言葉を、お尻を吹くために使うとは何事だ」との論調が沸き起こるのも、不思議はないといえよう。
この黒トイレットペーパー。発想はたしかに斬新だが、果たして、メーカーがその色に求めるような「贅沢感」と共に使われることになるのか、注目したいところだ。(24日付フォーリャ紙より)