テメル大統領が自身に向けられた2度の告発を回避するためにとった措置によって生じた歳入減と支出増は、総計320億レアルに上る可能性があると、25日付現地紙が報じている。
テメル大統領への2度目の告発受け入れ(最高裁での審理承認)に関する下院での全体審議と投票は25日に行われたが、7~8月の1度目の告発も含め、下院の全体投票で告発回避に必要な172票以上を確保するために、テメル大統領は膨大な金を犠牲にしてきたとエスタード紙が指摘した。同紙によると、その額は、総計321億レアルに及ぶ可能性があるという。
同紙はその失った額の例を大きく分けて四つ紹介している。一つ目は労働従事者の年金基金にあたる、農業労働者支援ファンド(Funrural)への滞納金に対する恩赦だ。上院が農牧企業家や農業生産者の積立金の滞納分、170億レアルの支払い免除を決めたのに、政府は差し止めを行っていない。
二つ目はやはり農業関係者に益するもので、25日付本紙でも報じた、環境問題で企業などがおかした犯罪に対して国立再生可能天然資源・環境院 (IBAMA)が科した罰金を最大6割まで減額し、罰金を環境の回復や保全のための投資に代えることを認める大統領令発令だ。これによって政府は、本来得られるはずだった罰金27億レアルを失うことになる。
これらの農業関係の対策を行うのは、農業畑の下院議員が214人もいるためだ。これらの下議は、テメル大統領の民主運動党(PMDB)の議員が多い。
三つ目は、2017年度の滞納税回収計画(Refis)での減収だ。連邦政府が議会に送った計画では、今年のRefisによる税収は130億レアルの予定だった。だが、議員たちが自分たちの滞納分も含め、返済がより容易になるよう抵抗したため、滞納分の税の回収額は66億レアル程度となりそうだ。これで当初の予定の49・23%に当たる64億レアルが犠牲になる。
四つ目は、空港インフラ業務公社(インフラエロ)による公私合同プログラム(PPI)の一部中止や延期だ。この措置は、運輸省やインフラエロを管轄する共和党(PR)議員を喜ばせるためのものだ。政府は当初、財務省たっての願いで、インフラエロの大きな財源の一つだったサンパウロ市のコンゴーニャス空港民営化を決めていたが、これを手放した。同空港の民営化停止で、60億レアルの損を被る形となった。
このようにして、政府の財政計画の中で犠牲になった額は321億レアルに上る。テメル大統領は議員割当金も42億レアル分開放しており、それも加えると、自己保身のために363億レアルを費やしたことになる。